「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!

宅配ビジネスが揺れている。急増するeコマース(EC)に対して現場の体制が追いつかず、業界の“雄”であるヤマト運輸は荷受量の総量規制に踏み切った。同業他社も送料値上げの方針を固めている。こうした「宅配クライシス」の原因は “人手不足”として語られているが、本当にそうなのだろうか。ダイヤモンド・オンラインでは「宅配クライシス」と題した特集を掲載、第1回は、クライシスの“犯人”に迫る。(フロンティア・マネジメント代表取締役 松岡真宏)

 学生時代で下宿生活をしていた30年前。宅配便は今よりも価値あるものを運んでいた。実家から宅配便で送られてくる食品や衣服を、下宿先で待ちわびていたものだった。社会人に成り立ての頃も、地方出張の際に各地の名産を実家に宅配便で送っていたが、実家では荷物の到着を心待ちにしていたようだ。

 このように、20世紀の宅配便は「送る人」と「受け取る人」の“想い”を繋ぐものであり、金銭的かつ感情的価値のあるモノが運ばれていた。消費者(C:Consumer)が、消費者(C:Consumer)に送るというのが原点であり、宅配便とは「CtoCサポートビジネス」であった。

 そのため、ヤマト運輸はじめとする宅配企業にとって、送り手である消費者(C)こそが、宅配送料、つまり価格交渉の相手であった。宅配企業と消費者個人では、前者にバーゲニングパワーが存在していたため、消費者からの送料値下げ要求などは考える必要がなかった。