この段階では損得とアーキテクチャは電気スクーターを後押ししていた。

2016年5月の深セン。写真に見えるスクーターはすべて電気。無音で走ってくる電気スクーターにおびえながら街を歩く必要があった

電動スクーターから
自転車シェアリング普及までの試行錯誤

 電気スクーターは便利だがデメリットも多い移動手段だ。

電動スクーターは希に発火する(2017年撮影:高口康太

 無免許で乗れ、運転マナーも良くないことから多くの事故が発生していた。また、車検やナンバーの仕組みがないことから粗雑な製造やメンテナンスによる発火事故なども多く発生し、深セン市はついに電気スクーターを建物内で保管することを禁止する条例を出すに至った(どの程度の人が守っているかはわからないが)。

「雑に設計・製造した電子機器がどのぐらいの確率で燃えるのか」は正確な見通しが難しいが、つい最近(2017年6月)にも深センで取材中のジャーナリスト高口康太さんが目の前で燃える電動スクーターの写真を送ってきてくれた。マッチ棒での火傷と違い、大容量のリチウムイオンバッテリの発火はダメージが大きく、いくら確率が低くても怖いものは怖い。日本だとこの一件だけで、国全体で利用が規制されるだろう。また、条例により電気スクーターを屋外に置くと盗難の問題もつきまとう。

 というわけで、便利で燃えず盗まれない近距離の移動手段が求められていたところに、シェアリング自転車はぴったりマッチした。この2~3年で地下鉄が一気に普及したことも大いに後押ししただろう。

第1回の連載でも紹介した、2014年(左)と2016年の深セン地下鉄。4本だった地下鉄が2年あまりで8本に増え、さらに3本が新しく開通しつつある

 もちろんシェア自転車が最終的な解決策と決まっているわけではない。シェア自転車サービスには複数の業者が存在し、「自転車にGPSを搭載して常に位置を送り続け、ロックはスマホでしか解除できない。デポジットは299元(5000円ほど)」(Mobike)という高機能なものから、「自転車は特に工夫のないダイヤルキーつきのものを使い、ナンバーは固定。デポジットは99元(1600円)」(OfO)という割り切ったものまで群雄割拠の状態が続いている。