脳を機能させるためには、集中とその解除を交互に行なうことが望ましい。それができると、創造性はより高まるという。では、どうすればその状態を意識してつくり出せるのか。そこには3つの有効な方法がある。


 集中する能力は、卓越性への重要なけん引役である。To Doリストやタイムテーブル、カレンダーのリマインダー機能など、集中するためのテクニックはすべて、やるべき仕事に注力する助けになる。これに対する異論は、まずないだろう。

 それに、気をそらすものに抵抗し、目の前のことに集中することが有益だと裏づける科学的証拠がある。たとえば、1日に10分ずつマインドフルネス瞑想を行なえば、リーダーシップを効率的に強化できる感情をより巧みにコントロールできるようになるし、過去の経験から学べるようにもなるからだ。このように、集中力は非常に有益なのだが、実は、集中力には問題点もまたある。

 その問題とは、過度に集中すると脳内の集中回路が疲れ果ててしまうことだ。エネルギーを枯渇させ、自己制御できなくなる。エネルギーが枯渇すれば、より衝動的になり人を助けようともしなくなる。その結果、いいかげんな判断を下すようになり、他者との協調性も低下する。

 では、どうすればいいのだろうか。集中するのか、それとも集中を解除したほうがいいのか。

 最近の研究によると、集中することと、集中を解くこと、そのどちらも重要である。脳が最適に機能するのは集中と集中解除を交互に行なうときであり、そうすることで回復力が発達し、創造性は高まり、より優れた判断を下すこともできる。

 集中を解いているとき、人は「デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network)」と呼ばれる脳回路を使っている。その略称はDMN、かつては別名「ほとんど何もしない(Do Mostly Nothing)」回路と呼ばれていた。なぜなら、意識的に集中するのをやめた場合にのみ働く回路だったからである。しかし、この回路は「休息中」であるにもかかわらず、身体のエネルギーの20%を使用している(これと比較して、意識的に努力しているときに消費するエネルギーはわずか5%と少ない)。

 DMNがこれだけのエネルギーを要するのは、脳が「休息中」どころか水面下で活発に働いている証拠だ。DMNは、脳の意識下のレベルで古い記憶を掘り起こし、過去・現在・未来の間を行き来し、さまざまなアイデアを再結合させる。それまでアクセスできなかったこの新しいデータを使って、自己認識を強化し、みずからの存在意義の感覚を発達させる。そして、創造的なソリューションを考え出したり、未来を予測したりできるようになり、これが優れた意思決定につながるのである。またDMNは、他者の思考への同調にも役立ち、チームとしての理解や一体感を高めてくれる。

 このDMN回路を日常のなかで働かせる、簡単で効果的な方法がいくつかある。