藤井四段の「戦い方」に見るAIと人間の頭脳の相乗効果Photo:日刊現代/アフロ

 14歳のプロ棋士である藤井聡太四段の快進撃が注目を集めた。7月2日の対局では佐々木勇気五段に敗れ、惜しくも30連勝にはならなかったが、30年ぶりの新記録である公式戦29連勝など、藤井プロの話題には事欠かない。特に関心を集めているのが、藤井四段が、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いた将棋ソフトを使って技の研究を行ってきたことだ。同四段は序盤から積極的に攻めることで知られる。序盤から攻めるスタイルは、従来はあまり見られなかった。それは、玉将をとられることを恐れる心がない、人工知能ならではの攻め方といえる。人工知能を積極的に活用し、従来にはない発想を将棋界に持ち込んだ藤井四段は、まさに“革新”を起こしている。

先手必勝を支える
人工知能

 将棋に詳しい複数の知人に話を聞いたところ、皆一様に口をそろえて「藤井四段の攻めは、まさに先手必勝。これまでの将棋界には見られなかった棋士だ」と評する。ある意味で、藤井四段は将棋界にとっての「新人類」だ。それは将棋界にイノベーションが起きていることとも言い換えられる。

 藤井四段は人工知能を武器にして、従来の将棋界にはなかった戦い方を実行に移した。実際に藤井四段と対戦した棋士も、指し方にAIの影響が見られるとのコメントを残している。

 従来の将棋の学習法は、専門書などを参考にする、あるいは師匠に教えを乞い、戦法に習熟することが一般的だったはずだ。序盤は玉将を囲むとともに、中盤以降を見越して駒を動かしやすい(攻めやすい)陣形を整えることが重視されてきた。これが“定跡”だ。この定跡に新風を持ち込み、序盤での新しい攻め方を編み出し続けたのが故升田幸三氏である。同氏の将棋人生は、“新手一生”と評されている。言い換えれば、新しい指し方を考えるには、一生ほどの時間が必要だということだろう。