国内市場が伸びないので海外市場へ──。NTTグループらしからぬ、急進的な海外M&Aを続けてきたシステム開発首位のNTTデータは、見た目の好調ぶりとは裏腹に深刻な悩みを抱えている。

 NTTデータは、静かに悩んでいる──。

 1985年の「通信の自由化」(NTTの民営化)の流れのなかで、88年にNTTグループから切り離されて以来、過去20年間増収増益を続けてきた。そして、2007年度には、悲願の連結売上高1兆円を突破することができた。

 だが、09年度連結決算では第3四半期直後、同じく10年度決算でも第2四半期直後に、業績の下方修正を行った。創業以来、快進撃を続けてきたNTTデータが2年連続で減益に転じたのだ。

 その原因は、「連結売上高の数字は成長しているが、単独売上高では伸びていない」(山下徹社長)ことに尽きる。実際、図①のとおり、2000年度以降の単独売上高は“ほぼ横ばい”の状態だ。

 それを補ってきたのが、国内の大企業のシステム子会社のM&Aであり、05年以降に加速させた海外の有力システム企業のM&Aだった。メインの受注先だった官公庁以外で民間企業のノウハウ取得を目指し、欧州や米国で10以上の企業グループを買収した。11年度の海外売上高比率は、8.7%から16.7%と倍増する見込みだ。

 だが、その一方で、11年3月に発表した10年度決算では、10年12月に買収した米国の総合IT企業のKeane社の連結売上高198億円(3ヵ月分)を加えなければ、NTTデータは増収にならなかった──。足元は、「クビの皮一枚でつながった状態」(財務部門の幹部)だったのである。

 海外での矢継ぎ早のM&Aでなんとか成長路線を保っている。それがNTTデータの実態だ。すでに海外売上高は、10年度実績で1000億円を超えた。そして、現行の中期経営計画では、11年度に2000億円、12年度には3000億円を見込む。04年度の海外売上高が55億円にすぎなかったのだから、あまりに急進的な海外シフトである。

 NTTデータが、09年5月に向こう4年間を対象とする中期経営計画を発表した際には、国内IT関連市場は年率約2.7%(米国の調査機関IDC調べ)で成長すると目されていた。だが、07年秋から断続的に続く世界的な金融危機のあおりを受けて、現実の国内市場は漸減傾向に入り、マイナス1.7%成長となった。さらに、11年3月の東日本大震災による影響を考えれば、市場規模が拡大する余地はほとんどなくなった。