週刊ダイヤモンド7月15日号の第2特集は「岐路に立つネット証券 トップ6人が語る未来像」。昨今ブームの「フィンテック」の元祖といえる「ネット証券」大手6社トップが、金融投資の将来を予見した。ここでは、本誌に収まりきらなかったインタビューの「拡大版」をお届けする。第2回目は、1999年に元住友銀行取締役の国重惇史氏に誘われる形で、現在の楽天証券(旧・DLJディレクトSFG証券)に入社し、事業拡大を推進してきた楠雄治社長だ。(週刊ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

日本で資産形成ビジネスの開花にはあと20年かかる楠雄治・楽天証券社長 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 ゼロスタートだったインターネット証券の黎明期を振り返ると、全体としてここまで個人のシェアが広がり、何百億円もの売り上げ規模の会社になるとは正直、想像できませんでした。そういう意味では一般の人にも受け入れられており、世の中のニーズにも非常に合っていただろうと思います。

 ですが、もっと裾野を広げて一般大衆をみれば、実はそういう人が参加する割合はそこまで大きくありません。つまり、投資は、まだ本当の意味で大衆化していません。真に大衆にも広がりを持たせていくためには、フィンテックによる投資革命はまだ始まったばかりの状況にあるといえるでしょう。テクノロジーの進化は今後、投資家層を広げる一つのトリガーになると考えています。

 ただ、これまでのネット取引はいわゆる(短期売買中心の)「トレーディング」が主でした。そうではなく、将来に向けて資産をいかに運用していくか。資産の形成や防衛に、投資が重要な手段となり得るという考え方に人々の意識が向かわねば、根本的な構造は変わりません。技術の進歩は、それをサポートする役割を担えるとみています。

 具体的なツールの一つに、ロボアドバイザーがあります。一般の人がもっと使いやすいかたち、例えばロボが初めに簡単な“診断”をして、投資ポートフォリオの選択肢を示すなど、投資判断をアシストするような機能の発展が期待できます。