東京電力の福島第1原子力発電所の事故を受け、東電の賠償支払いを支援する「原子力損害賠償支援機構法」が成立した。「国の責任」が明記されたというが、実態は違う。国が文字どおり責任を取って財源を出すものではない。しかも、利害関係者の責任の明確化は2年後にまで先送りされてしまった。

 東京電力の賠償支払いを国が支援する「原子力損害賠償支援機構法」をめぐり、与野党の修正協議が山場を迎えた7月下旬のこと。かねて東電の破綻処理を主張していた自民党の河野太郎衆院議員は、期待を大いにふくらませた。

「『東電を債務超過にさせない』との閣議決定が取り消された」という情報が舞い込んだからだ。

 ついに法的整理の道筋がついた──。自身のブログに「東電処理への大きな一歩」と銘打って投稿した。破綻を懸念した市場関係者にもその反響が広がった。

 しかし、週明けに支援機構法の文面を目にした河野議員の期待はすぐに打ち砕かれた。「閣議決定の役割を終えたものと認識し政府はその見直しを行うこと」という内容は法的拘束力のない「附帯決議」に盛り込まれただけだった。実態はなにも変わっていなかった。

 河野議員は「東電の株主や金融機関に責任を取らせ、東電に賠償資金を出せるまで出させて、残りを国が面倒見ればよい。このままでは資本主義ではない」と憤る。

 支援機構法で露呈した問題点は、責任の所在がついぞ見えないことにある。与野党協議による修正では、「国の責任」が明記されたといわれるが実態を伴ってはいない。実際の賠償負担が回り回って国民へと向かう構図になんら変わりはない。