米国債格下げで欧米不安、極まれり!
円高に向かうエネルギーが止まらない

 8月初旬、懸念が広がっていた米国の債務上限引き上げ問題が一応決着した。それによってドルに関する不安要素が1つ解決したのだが、円・ドルの為替相場は一段と円高方向への動きを加速した。

 それに対して、わが国の政府・日銀は、大規模な為替介入を断続的に実行した。介入によって、一時円は対ドルで80円台まで弱含みとなったものの、多くの市場関係者のあいだで、日本の単独介入の効果の持続性については懐疑的な見方が有力だ。

 実際、為替市場では、ヘッジファンドや為替ディーラーの「円買い圧力」が根強く、徐々に円高に向かうエネルギーが蓄積しているように見える。

 それに加えて、8月5日、有力格付け会社の1つが、米国の国債の格付けを最上級のAAA(トリプルA)から、一ランク下のAA+(ダブルAプラス)に引き下げたと発表した。

 格下げの影響については、今後金融市場の動向を注視する必要はあるものの、少なくとも、米国の信用力が低下したことは間違いない。

 問題は、米国の信用力低下、EUのソブリンリスクの高まり、さらには世界的な景気減速などのマイナス要因を背景にして、スイスフランと並ぶ世界の“安全通貨”である円が、今後も買い上げられる可能性が高いことだ。

 今のところ、ドルやユーロなど主要通貨が強くなる要素が見当たらない。すでに円は史上最高値近辺に上昇しており、これからさらに円高が進むようだと、わが国の主力輸出企業に大きな痛手が及ぶことになる。

 大手企業の経営者の1人は、「円高、電力供給の制約、税負担の重さを考えると、国内に残る意味はほとんどない」と指摘していた。