週刊ダイヤモンド7月15日号の第2特集は「岐路に立つネット証券 トップ6人が語る未来像」。昨今ブームの「フィンテック」の元祖といえる「ネット証券」大手6社トップが、金融投資の将来を予見した。ここでは、本誌に収まりきらなかったインタビューの「拡大版」をお届けする。第5回目は、システムエンジニア(SE)出身の変わり種で、数年前から「APIエコノミー」を標榜してきた、カブドットコム証券の齋藤正勝社長だ。(週刊ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

カブコム社長「“証券会社”の存在感を消さないと投資は身近にならない」齋藤正勝・カブドットコム証券社長 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 ネット証券は株取引時の手数料を劇的に引き下げ、投資の大衆化を促した「フィンテック1.0」として、一定の成果を挙げました。ただ、当初はもっとドカンとした成果を期待していたはず。銀行口座や保険などの普及率は極めて高いのに「証券投資」となった途端にやらない人がほとんどです。この状態は個人的に“証券界の敗北”だと思っています。

「1.0」の牽引役となったのは、基本的に金融マン出身の人が中心でしたが、最近はIT屋さんが金融に侵食するような形も増えています。僕もSE出身として、はじめからITアプローチでやってきました。金融領域は(親会社の)三菱UFJフィナンシャル・グループのものを利用させてもらい、僕らはグループ内で得意な証券システムやIT・ネットのシステムを磨いていこうと。そういう意味で、証券や金融の分野に(他のネット証券の)皆さんほど思い入れがないというか、証券業自体にそれほど未来はないと思っています。

 というのは、株式投資をする人がそんなに増えていないですよね。情報や手数料、投資環境など機関投資家とのさまざまな格差はかなりなくなり、ある程度の増加をもたらしました。ですが、大衆化を進めてきたにもかかわらず、思ったより株投資をする個人が増えていません。“証券人口”が何人いるのかと考えれば、恐らく1000万人はいなくて、数百万人単位でしょう。