「俺、ぎりぎり、ゆとり世代じゃないんですよ、セーフです。」

 新入社員に、彼らが受けてきた教育についての話を聞こうとしたら、こんな返事が返ってきた。彼が「セーフ」と言ったように、「ゆとり世代」という言葉は、学習内容が少なく、学力が低いといったネガティブな使われ方をすることが多い。しかも否定の対象は学力だけにとどまらず、「好きなことしかやらない」「受け身」「主体性がない」というように、人格までをも否定するような単語として語られることすらある。

 しかし、冒頭の新入社員の返答は大きな誤解を含んでいる。そもそも学校教育に「ゆとり」の傾向が見られるようになったのは、1980年代のことである。「ゆとり」はいきなりはじまったわけではなく、教育のゆとり路線は段階的に強化されつつあった。80年代の移行期間を含めると、実は現在20代後半の人たちも、「ゆとり路線」のもとで教育を受けた経験を持つ。それが本格化したのが2003年の学習指導要領の改訂なのだ。

 本稿では、「ゆとり」という新たな教育観のもとで学校教育を受けてきた若手の実態を把握した上で、彼らの強みが活かせる活躍の場をどのように作るのかという点を論じていきたい。

20代の基礎力は
他の世代よりも高い

 まず、若者たちに能力面における低下傾向が確認されるのか、ゆとり路線のもとで教育を受けた20代とそれ以降の世代との比較をしてみよう。最初に彼らが保有している「対人基礎力」「対自己基礎力」「対課題基礎力」などで構成される「基礎力」を確認する。