「外反母趾」名医の開発靴が全く売れなかった“女心”とは

なぜ女性は痛くても
ピンヒールを履くのか

「ハイヒールは女の武器」という台詞が奈津美さん(仮名・43歳)は嫌いだ。

 そんな武器を行使できない自分が、“女性として”大きなハンデを背負っているような気がしてしまうからだ。

「ヒールを履くことで背筋がしゃんと伸びるし、脚の筋肉も引き締まりますでしょ。わたくしはおばあちゃんになっても、タイトスカートに9センチ以上のピンヒールで生きて行きたいと思っておりますのよ。女性として、美しくある努力を怠らないのは、当然じゃございませんこと。ほ~ほっほっほっ(笑)」

 テレビ番組などで、いかにもセレブ風の口紅真赤系熟女が「わたくしの美の秘訣」と微笑み、勝ち誇ったようにピンヒールで闊歩する様子を見るとげんなりする。

 (ふんっ、ピンヒールなんか履いていたら、ワーキングマザーは務まらないわ。あんた、仕事帰りに子どもの手を繋いでスーパーで買い物して、ママチャリで帰ったことあるの。小さな子はちょろちょろするから、猛ダッシュで追いかけなきゃいけないこともしょっちゅうよ。

 それにここは自然災害大国・日本よ。そんな細くて高いヒール履いて、いざという時、逃げられるの。子どもを助けられるの。あ~怖い。危機管理意識低過ぎでしょ)

 こんな心の声の半分は負け惜しみだ。

 なぜなら奈津美さんは、危機管理のためにピンヒールを履かないのではない。外反母趾が痛くなるので「履けない」のである。