足もとで、「スマートグリッド」という言葉がにわかに注目され始めた。日立製作所と三菱重工業の統合報道により、スマートグリッドビジネスが脚光を浴びたことは記憶に新しい。福島原発事故を受け、再生可能エネルギー導入の必要性が叫ばれるなか、政府は再生可能エネルギー特別措置法案の成立を目指しているが、スマートグリッドは、再生可能エネルギーを軸とした新たな電力供給の仕組みづくりに欠かせない技術だと言われる。話題が先行している感の強いスマートグリッドとは、いかなる技術なのか。そしてそれは、再生可能エネルギーへの移行を目指す日本の電力供給に、どのような影響を及ぼすのだろうか。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

日立と三菱重工の統合報道に業界騒然
隠れた注目キーワードは「スマートグリッド」

 日立製作所と三菱重工業が事業統合――。8月初頭、こんなセンセーショナルな見出しが新聞紙上に踊った。これが本当だとすれば、戦後最大級の大型再編となる。

 主要事業の包括的な統合を望む日立と、統合を部分的に留めたい三菱重工の間に温度差が見られ、「交渉が難航している」という報道も目につく。だが、いずれにせよ産業界に大きな構造変化をもたらすきっかけになる可能性は高い。

 両社の統合が実現した場合、最もシナジー効果が大きいと見られるのが、「インフラ事業」だ。日立は電機メーカーの中で唯一、発電プラントとITシステムの両方を手がけている。かたや三菱重工は、火力、原子力などに加え、風力、太陽光などの自然エネルギーに至るまで、幅広い分野の発電機器に強みを持っている。

 そこで浮上してきたのが、「スマートグリッド」(次世代送電網)というキーワードである。「インフラ事業における両社の強みを持ち寄れば、スマートグリッドビジネスで大きなシェアを獲得できるのでは」と見る関係者は多い。

 そもそも両社の統合において、スマートグリッドなる技術に注目が集まっているのはなぜだろうか。それは、東日本大震災に伴う原発事故により、電力供給体制を抜本的に見直す必要性に迫られている日本にとって、「救世主」となるかもしれない技術だからだ。

 国内で「脱原発」の気運が高まり、再生可能エネルギーへの転換が叫ばれるなか、スマートグリッドはその流れを後押しする技術として、にわかに注目され始めた。

 再生可能エネルギーは、今や国家を挙げての関心事だ。国会では、菅直人首相が退陣条件の1つに挙げるほど、「再生可能エネルギー特別措置法案」の成立に執念を見せている。