不安は瞬く間に伝播する。欧米債務問題を引き金としたリスク資産からの逃避の動きは世界を駆け巡り、同時株安を引き起こした。市場はその後、落ち着きを取り戻したかに見えるが、先行き不安の根は深い。欧米、新興国それぞれが構造問題とジレンマを抱え、抜け出すのは容易ではない。世界経済は複合危機に陥っている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小栗正嗣、河野拓郎、竹田孝洋、前田 剛)

欧州の財政危機は構造問題に手がつけられないまま燻り、米国や新興国経済もジレンマを抱える。これらは連鎖し、世界の金融市場を再度混乱に陥れる危険をはらむ。

欧州経済
対症療法で燻る債務危機の火種
共同債発行か債務削減が不可避

 欧州では今、ある構想についての議論がわき起こりつつある。「ユーロ圏共同債」の創設だ。

 イタリアのトレモンティ経済相は8月13日、「財政危機の解決には共同債の発行が必要」と発言。15日にはドイツ卸売・貿易業連合会のベルナー会長が、「このままでは欧州債務危機を発端にした世界恐慌が起きるリスクがある」とし、ドイツ、フランス両国首脳に共同債発行を求めた。

 ユーロ圏共同債とは、ユーロ圏の各国が共同で発行する国債だ。ユーロ圏全体でその償還に責任を持ち、各国は歳入の一部を償還資金として拠出する。それぞれの国の財政の独立を制限する、財政統合への第一歩であり、欧州債務危機問題の最終カードである。

ギリシャ第2次支援の
民間負担が連鎖に拍車

 この共同債論議をにわかに沸騰させたのは、言うまでもない、マーケットの動揺である。

 発端はやはりギリシャ問題だった。7月21日、ユーロ圏諸国は総額1090億ユーロに上る、ギリシャへの第2次支援策をまとめた。ギリシャの財政赤字削減が、昨年5月の第1次支援策のプランどおり進まなかったためである。