今年5月、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は長期経営方針「MUFG再創造イニシアティブ」を発表。その中で、FG傘下の銀行と信託銀行の長年の縄張り争いにメスを入れたが、今まで語られなかった「信託目線」での改革の真意について、トップの池谷幹男・三菱UFJ信託銀行社長が口を開いた。(週刊ダイヤモンド編集部 鈴木崇久)

──最初に、なぜ今取材を受けたのかについて教えてください。「再創造イニシアティブ」の中で、三菱UFJ信託銀行の法人融資事業を、三菱東京UFJ銀行に一本化することを決めましたが、信託は一本化に長年反対してきました。ついに手放すことになった裏には信託と銀行の激闘があり、さらに、そうした折衝で小山田(隆・三菱東京UFJ銀行)前頭取が心労を重ね、異例となる1年での頭取交代の原因になったとも言われます。

三菱UFJ信託銀行が法人融資を「捨てる」真意、トップが語る池谷幹男・三菱UFJ信託銀行社長は、自身も長く企業年金や公的年金の運用を手掛け、デフレ下で苦心してきた。「そのノウハウが今後の資産運用事業の成長に活かせる」と語る Photo by Yoshihisa Wada

 いやいやいや……。

──インタビューを受けるには、まだデリケートな時期だったのではないでしょうか。

 これはもう、何十年に1度というくらい経営の舵を大きく切って、「新しい信託銀行をつくる」という意気込みで新しいスタートを切るところだからです。三菱UFJ信託という“生き物”はどう変わろうとしているのかという方向感を、顧客や社員に示す機会があったほうがいいと思いました。

 今と同じビジネスモデルでも、ここ数年はうまく経営できるでしょう。国の成長戦略において「貯蓄から資産形成」や、(企業と機関投資家の行動規範として制定した)コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの「ダブルコード」などの改革が推進され、資産運用や企業・機関投資家の支援といった事業のニーズが高まっているからです。