80年代末のバブル経済でこの構造にひびが入り、それまで社会の底辺にいた(ヤクザと同類の)ひとたちがきらびやかな衣装をまとって登場しますが、バブル崩壊と暴対法(暴力団対策法)の施行でその抜け穴はたちまち塞がれてしまいました。

 しかしその後、グローバル化の荒波によって日本社会の構造は根本から揺さぶられ、それまでつぶれるはずがないとされていた大手金融機関が次々と破綻する経済的混乱を経て、一介の若者が徒手空拳で大きな富を合法的につかめる時代がやってきました。

 冷静に歴史を振り返れば、「経済的成功への機会」という意味で、現在の日本が過去のどの時代よりも恵まれていることは間違いありません。すなわち私たちは、いまの時代の日本に生きているというだけで、とてつもない幸運に恵まれているのです。

 だとしたら考えるべきは、この「奇跡」と「幸運」を活かし、どのように「幸福な人生」をつくりあげていくかでしょう。

 これまで私は、何度かこう述べました。

 ひとは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。

 私の新著『幸福の「資本」論』では、「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本=資産から、「幸福に生きるための土台(インフラストラクチャー)」の設計を提案しています。この考え方はきわめてシンプルですが、だからこそとても強力です。

 次回から、その設計の仕方について述べて行きましょう。

(作家 橘玲)