日本においては、サービス業へのシックス・シグマ導入事例はあまり聞かれない。しかし、大きな成果を上げている企業もある。ドイツポストDHLグループ内の日本法人、DHLジャパンである。サービス分野やホワイトカラーの生産性向上を目指す日本企業にとって、同社の取り組みは重要な示唆を含んでいる。

コスト構造改革を経て攻めの経営を目指す

 世界金融危機は国際物流業界にも大きな影響を及ぼし、2009年、国際エクスプレス業界全体の貨物取扱量は前年比2割減少した。しかし同年第14半期で底を打ったかたちで、現在では金融危機以前に近い水準にまで回復した。ドイツポストDHLの業績も急回復し、2010年上半期は売上高、利益共に大幅増を記録。売上げと利益の両面で、DHLジャパンはそれを上回る成長率を達成した。

サービス品質の向上で<br />中長期的な競争優位の基盤をつくる山川丈人
(c) Junichi Waida

 私が社長に就任した2009年4月は、当社が最も厳しい環境に立たされていた時期だった。4半期ベースで赤字を計上しており、拠点の統廃合や集荷配送体制の見直しなど、外科手術的な対策を講じざるをえなかった。

 今年(2010年)は、1転して攻めの経営を掲げている。社員を前向きな気持ちにさせるため、「本年はコスト削減のための外科手術はしない」と宣言。改革でスリム化した組織体制の下、売上拡大に向けた積極的な施策を展開している。

 そして、強固なコスト構造を維持しつつ持続的成長を目指す活動を行っている。それが「ファーストチョイス」である。