かかりつけ薬剤師の効果に疑問、薬剤費削減額の2.7倍のコスト発生写真はイメージです

 7月13日、大手調剤薬局チェーンの日本調剤が、「『かかりつけ薬剤師』効果で薬剤費年間1億円削減へ 日本調剤『かかりつけ薬剤師』を効果検証!」と銘打ったニュースリリースを発表した。

 病院や診療所で薬を処方されても、飲み残したり、使われずに捨てられたりしている残薬は年間400億~500億円に上るといわれている。

 厚生労働省が2013年度に行った「薬局の機能に係る実態調査」でも、薬局の9割が「残薬のある患者がいた」、患者の5割が「医薬品が余ったことがある」と答えている。

 薬は、正しく使われないと症状の改善につながらないこともあるし、医療費の無駄使いにもなる。日本調剤のニュースリリースでは、「かかりつけ薬剤師」の服薬指導のほうが、一般の薬剤師よりも残薬の調整効果が高く、その削減額は推計で年間1億円を超えると報告している。

 服薬指導によって飲み残し分を調整してもらったり、問題のある重複投与が減ったりすれば、患者にとっては健康面でも経済面でもメリットが高い。厳しい財政運営を強いられている健保組合にも朗報だ。

 だが、ことはそう簡単ではない。なぜなら、「かかりつけ薬剤師」は、一般的な薬剤師による服薬指導より高い報酬が設定されているからだ。ところが、このニュースリリースで示されているのは、残薬調整による医薬品の削減額のみだ。服薬指導のコストも含めたら、かかりつけ薬剤師による残薬調整に、果たして大きな医療費の削減効果はあるのだろうか。公表された数字をもとに検証してみよう。

高度な服薬指導が期待される
かかりつけ薬剤師指導料

 日本の医療費は全国一律の公定価格で、原則的に2年に1回、厚生労働省の審議会で見直されている。病院や診療所の報酬が「医科」、歯科クリニック等の報酬が「歯科」、そして薬局での報酬が「調剤」だ。

 この報酬改定は国が目指す医療政策を実現するための重要な手段となっており、充実させたい診療科や項目に高い報酬をつけるのが慣例だ。経済的インセンティブを働かせて、医療者を誘導する狙いがある。