証券業界で「ストラテジスト」とは、投資戦略全般について分析して、投資戦略を提案する専門家だ。株式とか債券、為替など、マーケット別に担当が分かれていることが多い。外資系証券の日本法人も含め日本にある証券会社の場合は、日本株のストラテジストが、その証券会社を代表するストラテジストであることが多い。証券会社の調査系の仕事としては、経済を分析するエコノミストや投資家に人気がある業界を担当するアナリストとともに会社を代表する花形のポジションの一つだった。

 今、文末を過去形で書いたが、現在でも重要なポジションであるには違いないのに、かつてほど注目されていないように思うのは、筆者の思い過ごしだろうか。有名ストラテジストの人気ランキングは続いていて、業界内で激しい争いはあるのだが、申し訳ないが集団全体の印象が薄れてきた。

 理由の1つに、大物ストラテジストたちが年をとってきたことがあるかもしれない。エコノミストにも同じ傾向があるが、「同じことを言うなら知名度の高い人が言うほうが価値がある」職業なので、世代交代が起こりにくい構造だ。ある意味では、同期から一人出ることが、普通の官庁の事務次官よりもストラテジストのほうが成りがたいのかもしれない。

 ただ、顧客の属性(プロ・アマ、資金の性質、地域、年齢層など)によっては、サービスに当たるストラテジストのタイプを使い分けるといいのかもしれない。投資の世界では、過ごした時代が違うと物事の感じ方が違うので、若い顧客には若いストラテジストを当てるといったことは試す価値がある。

 本来は、マーケティング的な調査を行ない、それこそ戦略を考えるべきなのだろうが、証券はこうした努力が意外に遅れた業界だ。