今度失敗すれば国民は許してくれない
「民主党最後の政権」にならないために

 8月末、民主党の3代目となる首相に就任した野田佳彦氏は、自らを金魚になれない“どじょう”と称して地道な政策運営を約束した。実際の内閣や党内の人事を見ると、若手実力者を抜擢したり、党内融和を図るなど、堅実さを見せている。

 また、各省の事務次官を集めて協力を要請したり、福島の被災地に入るなど、矢継ぎ早に「やる気」を示してもいる。

 それに対して、国民の期待も予想以上に盛り上がっており、最近の世論調査では支持率は軒並み60%台という。鳩山、菅政権がかなり期待外れだったこともあり、今のところ、“どじょう”の印象が奏功して思いのほか好調な船出になっている。

 一方、今後の不安も多い。野田氏をバックアップする手勢は少なく、民主党内最大の勢力を誇る小沢氏をいかに抑えるかが、焦点になるはずだ。少なくとも、マニフェストの扱いについては真っ向から意見が対立しており、それをどのように調整するかは容易なことではないだろう。

 また、手勢が少ないぶん、官僚の実力に依存する割合が高くなる。特に、財務省の財政再建の要請と、景気回復、さらには経済成長戦略との折り合いをつける必要がある。

 世界経済に不透明要素が増えている現状、財政再建を焦り過ぎて、景気の腰を折るようなことがあると、1990年台後半の橋本政権の轍を踏むことにもなりかねない。野田氏自身が、“財務省の分身”と揶揄されるスタンスから脱却して、冷静な景気判断を行なうことが必要だ。

 それができず、景気を落ち込ませるようなことになると、国民は間違いなく民主党から離れていくだろう。そのときには、野田内閣が、民主党最後の政権になることも考えられる。