英語版を読む→

自動運転で解決する物流の課題【孫泰蔵】運搬用の水路と、人の移動用の陸路とが分かれたベネチアのように、地下道を運搬ロボットが走る都市ができれば、物流の問題を解消できるかもしれない

 新しい町をゼロベースからつくりたい。そう言うと日本では「いや、無理でしょ」という声が上がるかもしれません。ですが、東南アジアやインドに行くと、更地から新しい地域の中核都市をつくるというプロジェクトが存在します。

 そういったところで、インフラのハード面から、教育・医療福祉といったソフト面まで、僕たちの考えている21世紀型の「町」を形にしようと準備を進めています。社会の抱えている大きな課題を解決するようなモデル都市を示すことで、これからの時代に必要とされるものが直感的に理解できるようになると思うからです。

 そもそも、都市というのは、その時代ごとの交通技術の影響を強く受けます。20世紀は自動車や鉄道が一気に発達しました。すると、米国の都市に顕著ですが、都市の中心に駅が置かれ、道路が格子状に整備され、ハイウエーが張り巡らされる。自動車の幅や鉄道の大きさに合わせて区画ができ、町ができていったのです。

 例えば、油田の発見と軍需産業で発達した米テキサス州北部のダラスはその一つです。一方、米マサチューセッツ州ボストンのような古い都市には、港湾都市として栄えてきた歴史があります。日本においても、かごの時代と馬の時代、自動車の時代では都市の形態が違います。都市は交通技術と共に変化してきたのです。それも、「度量衡」(長さ、体積、重さやその単位)がその時代のテクノロジーによって規定されるからです。

 今後、自動運転技術やドローン技術など、交通技術が劇的に進化します。つまり、それによって町も大きく変わるのです。