『週刊ダイヤモンド』9月9日号の第一特集は「会社の数字がわかる反復練習 決算書100本ノック!」です。財務を理解し決算書を読み解くことは、働く人の必須スキルとなりました。実際のエピソードが超豊富な、楽しく易しい週刊ダイヤモンドからの100本ノックを是非、受け取ってください!

「決算書は読めた〝方がいい〟というのは間違っています。読めなきゃダメなんです」。そう説くのは、首都大学東京大学院の松田千恵子教授(経営学)だ。

 金融機関や格付け機関などで働き、多くの経営者と接してきた松田教授は、「日本企業幹部の決算書、財務への理解のレベルは残念ながら低い。中堅の社員では売上高と利益くらいしか理解していないこともある」と明かす。

 かつては決算書を理解する必要性が低かった。右肩上がりの経済が長く続く時代には、売上高の伸びさえ気にしていればよかったからだ。

 その後、日本経済が停滞すると、企業にはよりうまくもうけ、筋肉質な財務体質になることが求められた。本特集で後述する貸借対照表(BS)や、さらにはキャッシュフロー計算書(CF)を重視する経営だ。

 ただし、それも深く根付くには至らず、この20年間で日本のビジネスパーソンの財務スキルはほとんど上がらなかった。「CFはおろかBSにすら気が回っていない経営幹部も多い」(松田教授)。

 ところが、近年、急激に決算書への関心が高まっている。本誌2017年6月10日号「会計&ファイナンス」特集は、週刊誌としては異例の2度の大幅増刷を行ったほどだ。

 背景にはさまざまな事情がある。まずは2000年代に入って企業の買収が盛んになったことだ。買収に当たっては買収先企業の財務状況を把握しなければいけないし、買収された側も共通の理解が必須になる。

 また、14年には企業に積極的な情報開示を求めるコーポレートガバナンス・コードの策定が閣議決定された。

 そして、決算書の数字から算出できる経営指標のROE(自己資本利益率)を欧米並みに引き上げるべく、日本企業の目標ROEを8%にすべきだという報告が経済産業省よりなされ、企業は効率的な経営を求められるようになった。

 企業の財務への注目度はますます高くなるばかりなのだ。

100以上の
実例を反復し
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 ところが、そこで働く人たちの理解度が低ければまったく意味がない。せっかく、会社が数字を基に方針を立てても、それぞれの社員が財務のことを理解できていなければ、浸透していかない。

 社員の側から見れば、会社が自分に対して何を求めているのかが分からないということになる。端的に言えば、評価されず出世できないのだ。

 例えば、成長を果たすというミッションを課された場合。バンバン安売りをして販売数を拡大させればいいのか、それともきちんともうけを確保すべきなのか。そういう共通理解がないまま突っ走れば、立ち往生してしまうだろう。

 さらに、前出の本誌6月10日号では、総合商社やソフトバンクグループといった企業で「ファイナンス」という事業の収益などを評価する高度なスキルが現場でも求められている様子を描いた。そのファイナンスのスキルを身に付けるには、まずは決算書を読めなければいけないのだ。

 ただし、決算書、財務諸表を読み解こうとして挫折した経験がある人もいるはずだ。

 それはやり方が間違っていた可能性が高い。というのも、一部の会計、財務の指南書や大学の授業は簿記や仕訳から始まるため、難解に感じるからだ。

 しかし、その種のスキルは決算書を〝作る〟ために必要なのであって、〝読む〟ためには必要がない。これまでの経験から簿記や仕訳といった言葉にアレルギーがあるなら、いったん忘れてほしい。

 実は決算書は、やり方を間違わなければ、とても簡単に楽しく理解できるものだ。特に企業の実際のエピソードに沿って読み進めれば、自然と決算書の構造が頭に入ってくるだろう。そのやり方なら、反復練習のようにたくさんの量をこなしても、苦しくないはずだ。

 そこで、本特集では、「決算書100本ノック!」と銘打って、多くの事例を用意した。決算書の書面を丸々100枚載せるにはスペースが足りないため、一部抜粋の場合もあるが、100以上の企業の財務データを掲載している。

 パート1の前半では超初級者向けの説明をしているので、理解している人は読み飛ばしてもOKだ。

 決算書は、読み解くことができるようになれば、そこから企業の苦悩や喜びといったドラマがまるで立体映像のように飛び出てくるような面白いものなのだ。ぜひ、肩の力を抜いて読み進めてほしい。

エピソードを読んでいけば
楽チンに自然と身につく!

『週刊ダイヤモンド』9月9日号の第一特集は「会社の数字がわかる反復練習 決算書100本ノック!」です。

 今や、財務を理解し決算書を読み解く能力は、すべての働く人にとって必須のスキルとなりました。
「でも、なるべく簡単に楽しく理解したい……」

 そんな要望に応えるべく、特集では、企業の実際のエピソードやクイズを読み進めば、楽しく易しく自然とそのスキルがみにつくようにしました。

 まずは、売上高や利益、キャッシュフローといった基本もきちんと解説してあります。

 そして、本誌記者が担当する業界について、各業界の決算書から読み取れるエピソードを豊富に紹介しています。ライバル対決、歴史、ニュース、さまざまな切り口で読みやすく易しく伝えています。ランキングも多数掲載しています。

 さらに、ただ読むだけではなく、クイズに答える形で楽しく身につくパートにもかなりのページを割いています。利益を増やすにはどうすればいいのか?現場に決算書・財務データを生かすにはどうしたらいいのか?などのクイズを設置。是非、解いていただければと思います。

 英語決算書の探し方、読み方も必須英単語表とともに紹介。アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブック、ネットフリックスなどの決算の勘所も掲載しています。

 最後に、中小企業の方は必見のデータも掲載。23万社のデータからはじき出した業種別の健康診断です。ラーメン店から土木工事など全60種について分析しています。

 これまで、決算書を読み解こうとして挫折した人でも、気軽に読めるようになっています。是非、ご一読いただければ幸いです。