新築マンションは売主(デベロッパー)の体質に注意!
ダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴を公開

2017年11月13日公開(2021年2月25日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 碓井民朗:碓井建築オフィス代表 一級建築士、建築家

新築マンションの売主となる不動産会社を「デベロッパー」という。土地を仕入れ、商品企画を行い、設計事務所や建築会社(ゼネコン)を使って、建物をつくる。同じような立地、同じような価格帯の新築マンションでも、デベロッパーによって、マンションづくりの基本思想から、間取りなどの設計、販売対応などに差がある。しかも、それは大手かどうか、有名かどうかとは関係ない。ここでは、ダメなデベロッパーを見極める方法を紹介しよう。

一流マンションは、デベロッパーの知名度や規模とは別物

 新築マンションを選ぶとき、どうしても大手で名前の通った売主(デベロッパー)なら安心できると思いがちだ。確かに、杭の不具合から建て替えられることになった横浜の分譲マンションのように、大手であれば万が一の際、何とかしてくれるというイメージがある。10年以上前になるが、構造設計を手掛ける一級建築士による耐震偽装事件では、中堅デベロッパーが倒産し、同社が分譲した耐震基準を満たさないマンションのいくつかは、所有者たち自らが資金を負担し、建て替えた。

 「しかし、大手で有名なデベロッパーならどんな不具合や欠陥でも素早く丁寧に対応するかというと話は別です。販売時の対応にしても、情報開示の姿勢に首を傾げるようなケースは少なくありません。そもそも、分譲マンションとしての商品企画や品質レベルが一流といえるかどうかは、デベロッパーの知名度や規模とは別の話なのです」。こう語るのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。

 碓井氏によれば、こんなケースがあった。財閥系の不動産会社が、ゼネコン系だったデベロッパーを吸収合併し、その他の関連会社と併せて新会社(デベロッパー)をつくった。この新会社は、財閥系不動産会社が以前から使っていたマンションのブランド名を引き継いだが、物件によっては旧ゼネコン系のデベロッパーが土地を取得し企画したマンションが混じっていて、同じブランド名でも商品企画や建物の設計レベルにかなり差があったという。

どんなマンションができるかは「商品企画」で大きな差ができる

 そもそも、ひとつの新築マンションができあがるまでには、土地の確保、基本設計と建築確認申請、実施設計、そして建築工事といったステップがある。

 「こうしたステップの中で、一番大事なのが基本設計の前に行う『商品企画』です。日数をそれほど長くかける必要はありませんが、ここでデベロッパーの担当者だけでなく、設計事務所など関係者が集まってアイデアを練り、立地の特性や想定購入者に合わせて商品企画のつくり込みをしっかり行うかどうかで、できあがるマンションには大きな差ができるのです」(碓井氏)

 ところが、多くのデベロッパーはいかに早く販売を開始するかばかり気にして、商品企画を軽視しがちだ。新築マンションの販売は、建築確認が下りてからでないとできない。そこで、基本設計を手っ取り早く終えるため、敷地となる土地の容積率をできるかぎり使い切ることを前提に、構造はなるべくコストを切り詰め、間取りについてはこれまで手掛けたことのあるプランの焼き直しで済ませたりするのだ。結果的に、どれも似たような外観、似たような間取り(「田の字型」)のマンションができあがる。

こんなマンションをつくるデベロッパーには要注意!

 「商品企画には、デベロッパーの体質や姿勢が如実に現れます。ダメなマンションをいつも平気で繰り返しつくっているようなデベロッパーは”人が暮らす住まいをつくる”というこだわりに乏しいのではないでしょうか。机上で立てたスケジュールや予算を優先するあまり、コンクリートの箱をつくっているだけと言わざるをえません」(碓井氏)

 碓井氏が挙げたダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴は以下の通り。こんなマンションをつくるデベロッパーには注意が必要だ。

ダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴
~チェックが5つ以上つくマンションには要注意!~
特徴
(1) 高さ45ⅿ以内なのに15階建て以上
(2) 1階住戸の床の高さが周辺の地盤より低かったり、地下住戸がある
(3) 北東、北西など北向きの住戸がある(都心の超高層マンションを除く)
(4) 外壁(非耐力壁)にALC版を使っている(超高層をのぞく)
(5) 間取りは3LDKなのに専有面積が70㎡を切っている
(6) 天井と床が二重天井&二重床になっていない
(7) 屋外の非常階段が鉄筋コンクリート製ではなく鉄骨製である
(8) 室内の天井に大梁が張り出している
(9) 複数の棟を、むりやり外廊下とエキスパンションジョイントでつなげて1棟にしている
(10) 網戸の清掃などのため共用廊下側の窓の面格子を取り外すと、簡単には元に戻せない

高さ45m以内なら「15階建て」より「14階建て」が一流

 例えば、ダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴(1)について説明しよう。マンションの高さについては、地盤面から31m、45m、60mの3つが大きな区切りになっている。このうち一番多いのが、高さ45m以内のマンションだ。高さが45mを超えるとさまざまな法的規制が厳しくなり、さらに60mを超えると建築確認の申請などにあたって特別な手続きが必要になるからだ。そして、高さ45mぎりぎりでマンションを建てる場合、階数は「14階建て」か「15階建て」のどちらかになる。

 碓井氏によれば、住み心地や資産価値の点から一流のマンションといえるのは「14階建て」だ。なぜなら、高さ45m以内で「14階建て」にすると、平均階高が3m以上確保できる。階高というのは、一層(1階)分の高さのことで、その高さの範囲内で給排水管などを通し、天井と床の仕上げを行う。階高が3m以上あれば、天井と床の仕上げを「二重床かつ二重天井」にでき、上下階の間での遮音性が高まり、また将来のリフォーム時に配管類を移動したり、メンテナンスや交換もしやすい。しかし、「15階建て」では、屋上の立ち上がり部分などがあるため、平均階高がどうしても3mを切ってしまう。階高が3mを切ると大梁との関係で窓の高さが低くなり、室内に圧迫感が生じる。また、床と天井のどちらかが「直床」か「直天井」になり、将来のリフォームやメンテナンスがしにくい。

 高さ45m以内で「14階建て」にするか「15階建て」にするかは、まさにデベロッパーの判断だ。とにかく予算書の上で売上(販売総額)をできるだけ多くしようとするデベロッパーは、躊躇なく「15階建て」を選ぶ。そのほうが販売戸数が増えるからだ。一方、住み心地や将来のメンテナンス等のしやすさに配慮するデベロッパーは、「14階建て」を選ぶ。「住まい」としてのマンションをつくろうとするからだ。

1階住戸の床が地盤面より最低45㎝高いのが一流

 次に、ダメなデベロッパーがつくるマンションの特徴(2)を見てみよう。

 予算書の数字にこだわるデベロッパーは、高さが45mで15階建てのマンションをつくるほか、1階住戸の床の高さを周辺の地盤より低くしたり、場合によっては地下住戸までつくってしまう。近年、異常気象のせいか各地で短時間に大量の雨が降ったりしている。浸水のリスクを考慮すれば、1階の住戸の床面は地盤面から最低でも45㎝は高くしておくのが一流のマンションといえる。

 「ましてや、地下や半地下に住戸を設けることは、問題外です。日照や通風が確保しにくく、道路などから室内がのぞかれる可能性があります。また、地下水の水位が高いエリアでは、コンクリートに防水層を設けていても、やがて漏水する危険があり、台風や大雨で大量の雨水が流れ込んだら、それこそどんなことになるかわかりません。さらに集中豪雨等の場合に排水管内の汚水が逆流して、地下住戸内に侵入するケースがあります。地下は人が生活する場所ではありません」(碓井氏)

 法律では、地下住戸をつくることは認められている。床から天井までの高さの3分の1以上が地盤面より低いのが「地階」、つまり地下室とされる。地階に住戸(居室)を設けることは以前、禁止されていた。しかし、2000年の建築基準法の改正により、一定の条件を満たせば可能となった。具体的には、空堀(ドライエリア)を設けること、室内の湿度調整や換気の設備があること、防水措置が講じられていること、などだ。このように法律上、認められているとしても、「住まい」として好ましいかどうかは別の問題である。個人が自分の判断でつくる戸建て住宅はともかく、不動産のプロであるデベロッパーがつくる分譲マンションにおいては疑問である。

「設計基準書」の有無と内容が、一流を見分ける目印

 大手のデベロッパーになると、毎年何千戸という新築マンションをつくり、販売している。物件によって起用する設計事務所、建設会社(ゼネコン)は異なり、そうした中で一定の品質や自社らしさを守るために重要なのが「設計基準書」だ。

 「設計基準書は、『わが社はこういうマンションをつくります』というマニフェストのようなものであり、あって当然。さらに、その内容が重要です。先ほどあげた表のポイントについても、設計基準書において禁止をしたりルールを設けているのが一流のデベロッパーです」(碓井氏)

 「設計基準書」は各社とも対外的にオープンにしているわけではないが、販売センターなどで販売担当者に「御社には設計基準書はありますか? それをすべての物件に適用していますか?」と聞いてみるとよいだろう。その際、「立地も商品企画もそれぞれ違うので、個別に検討しています」というような答えなら少し怪しい。まして、「なぜそんなこと気にするんですか? お客様が気に入るかどうかが大事じゃないですか。うちは自信をもってつくっています」などというようなデベロッパーなら要注意だ。

「重要事項説明書」を契約まで見せない会社も要注意

 デベロッパーの体質に関して、もうひとつ注目したいのが「情報提供に前向きかどうか」という点だ。

 下記の関連記事でも少しふれたが、「設計図書一式」はマンションを建てるために必要な図面や表をまとめたものだ。専門的でかなりのボリュームがあり、素人には分かりにくい。しかし、新築マンションは、建物ができあがる前に販売を始める「青田売り」という販売方法が主流で、商品そのものをきちんとチェックする手段が限られる。パンフレットやモデルルームがあると思われるかもしれないが、パンフレットは良い点しか書いていない。モデルルームもごく一部のプランについて室内を再現しただけのもので、構造や設備の詳しい点は分からない。だからこそ、「設計図書一式」は必要不可欠な情報源なのだ。

【関連記事はコチラ!】
⇒新築マンションの価格高騰で「手抜き」が横行!? 間取りや壁、配水管の素材のチェック方法とは?

 「設計図書一式は通常、販売事務所に備え付けてあり、希望する人には閲覧させることになっています。私が現地同行サービスで依頼者と販売事務所へ同行するときは必ず、依頼者を通して売主に設計図書一式を用意してくれるように事前に頼みます。ところが行ってみると、購入予定者に見られたら売主にとって都合が悪い図面を“間引いた”図面集しかないことが何度かありました。依頼者が理由を尋ねると、会社の方針だといって開き直る。こうした点にも、デベロッパーの体質や姿勢が表れているといっていいでしょう」(碓井氏)

 情報提供に前向きかどうかについては、「重要事項説明書」のコピーを事前にくれるかどうかもポイントだ。新築マンションを購入する場合、契約を結ぶ前に購入する物件の概要や契約条件など法律で定められた一定の項目について、資格者(宅地建物取引士)が書面とともに説明(重要事項説明)しなければならないことになっている。そして、この説明は契約と同じ日に、契約の前に30分から1時間程度かけて行うことが多い。しかし、その内容は専門的で多岐にわたり、その場で初めて聞いてもすぐには理解できないだろう。その点、一流のデベロッパーは事前にコピーを渡し、不明や点や疑問な点があれば説明の際に質問できるようにしてくれる

 自社に都合のいい情報や良い点ばかりアピールするのではなく、購入者が納得して選べるよう情報を積極的に開示してくれるかどうかをぜひ、見極めたい。

【参考記事はこちら】
>>> 2017年11月の新築マンション市況を解説! 「暴落予想」から一転、価格引き上げる物件も

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