法務省が本格調査へ

 不動産登記は義務ではないため、相続時に移転登記をしなくても罰則はない。人口減少などで価値が低下し、一方で固定資産税や維持費ばかりが掛かる不動産は、相続人に所有権を移転するメリットはなく、不動産登記ならぬ“不動産投棄”されるケースが増えてきた。

 問題が顕在化したきっかけは11年の東日本大震災だった。津波の被災地から高台などに住宅を移転する「防災集団移転促進事業」において、所有者が分からず土地取得が難航する事態に陥った。

 所有者不明土地が増えれば、こうした公共事業や民間の土地取引において大きな障害となる。また、「所有者不明土地を自分の土地と偽って第三者に売る“地面師”などの詐欺集団が増えるのではないか」(不動産業界関係者)と懸念する声もある。

 こうした中、国もようやく対策に向けて動き始めた。政府は6月に閣議決定した骨太の方針で、関連法案を次期通常国会に提出する方針を決めた。また、法改正に後ろ向きだった法務省も、8月末に提出した来年度予算案の概算要求で、所有者不明土地の本格調査に乗り出すために約24億円を計上した。

 この問題を放置すればするほど、法定相続などによって権利関係が複雑化し、所有者を特定するのが難しくなる。25年以降は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、多数の相続が発生するのは確実。不動産登記を促す施策や情報基盤の整備、さらには所有者全員の同意がなくても土地を利用できる法制度への見直しなど、早急な対策が必要だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)