今回は、東北支援とメディアの取り組みを題材に、社会貢献とメディアのあり方について考えてみる。メディアはマーケティング戦略の重要なファクターなのだが、多くのビジネスパーソンにその本質的なことがあまり理解されてないように思える。今後のマーケティングを考える上でも、震災後のメディアについてお伝えしたい。

 メディアとの関係で今回の震災を考えると、最大の特徴はそれぞれのメディアが持っている本質的な特性が再認識されたことだと思う。特にテレビとラジオの本質的な差異が明確になったと思う。テレビは見るものだし、ラジオは聴くものだ。この当たり前のことが今回の震災でハッキリとした。

「見る」という行為は「対象物」を文字通り対象化する作業だ。客観視するというか、「自分が見ているものは自分とは別の存在である」という認識が「見る」という行為には常に内存する。一方で「聴く」「聞く」という行為は、他者との関係性を求める行為だ。誰かと関係性を持とうという意志がなければ、「聞く」という行為は起こりえない。幼い子どもが親に向かって「聞いて、聞いて!」とよく言うが、これもその表れだ。他者との関係性はまず聞くという行為から始まる。この2つの特性が、今回の未曾有の大惨事で明確に機能をわけた。

 テレビとはテレビジョンのことだが、これは「テレ+ビジョン」という言葉だ。「テレ」とは望遠レンズの望遠側を意味する言葉で、だからテレビジョンの本質は「遠くのものを見る」ことである。つまり報道だ。震災時、人々はテレビを通してまさに「遠くで起こっていること」を食い入るように見ていた。そして、この大惨事をどう受け止めればいいか、どう向き合えばいいかを考え始めた時に「つながり」を求め出した。そしてラジオを聞き始めた。

「パラサイト・イブ」などの作品で人気の作家・瀬名秀明氏は仙台在住だが、震災後の1ヵ月間、自室でひたすら「Date fm」(エフエム仙台)を聞いていたと新聞のコラムで書いている。避難所で多くの人が地元の災害FMを聞き、「テレビよりこっちの方がおもしろい」という人も多かったそうだ。被災地のど真ん中にいてつながりを求める時、人はテレビよりもラジオを選んだということだ。

 この特性の違いが、震災後のテレビとラジオの被災地への向き合い方の違いを生んでいると思う。テレビは当初から報道の枠の中で被災地と向き合っていたし、それはいまでもそうだ。ニュース番組の中ではまだまだ被災地の状況を伝えたりはするが、バラエティ枠を活かして東北と向き合おうという意思はあまり感じられない。それに対してラジオは、どこか局全体で向き合おうという意思を感じる。

時代の社会貢献シフトを
いち早く察知したJ-WAVE

 J-WAVEは震災翌々日の13日日曜日にジョン・カビラのナビゲートで「TOKYO UNITED Heart to Heart」を放送。その後も何度か特番を組んでいるが、同時に支援プロジェクト「Heart to Heart」を立ち上げた。

 第1弾として物流会社ウインローダー/エコランドと共同で「J-WAVE Heart to Heart つなげる、ココロプロジェクト」を実施。震災発生直後から、被災地に救援物資を届けようと呼びかけ、1万800名のリスナーから寄せられた170トンの救援物資を被災地に届けた。