野田内閣が発足して早々、小宮山洋子厚生労働相の「1箱700円」発言が飛び出し、その行方が注目されていた「たばこ税」。東日本大震災からの復興に伴う臨時増税案の中でたばこ増税議論は本格化し、結局政府は「1本2円の増税案」でまとまった。しかし、賛成派と反対派による「舌戦」は終息の兆しを見せず、一歩間違えば、感情論に終始してしまう難しさもある。たばこ増税議論はなぜここまで紛糾しているのか。そして、賛成派と反対派の主張はどれが正しくてどれがそうではないのか。これまでの経緯をまとめながら検証してみよう。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

論争に火をつけた「1箱700円」発言
なおも収まらない賛成派と反対派の舌戦

「これでは中世の魔女狩りと一緒ではないか。いったい何を考えているのか」

 野田内閣発足直後に、小宮山洋子・厚生労働相の「1箱700円」発言が口火を切った、たばこ増税論争。その後、東日本大震災からの復興に伴う臨時増税案の中で増税議論は本格化してきた。

 たばこ税は、一般的に国たばこ税と地方たばこ税、そしてたばこ特別税の3つを含めたもので、これにさらに消費税が加わってくる。民主党政権は議論の末、来年10月から国税について10年間1本1円、地方税について5年間1本1円増税し、約2.2兆円の税収増を見込む案を示すに至った。

 しかし、復興財源の大枠について与野党間で意見がまとまらないこともあり、たばこ増税議論は迷走を続けている。まだまだ「舌戦」の収束は見えていない。

 もしたばこ増税が実現すれば、税収は復興増税全体の4分の1を占める計算になる。これは相当大きいインパクトだ。日本で禁煙化が進むなか、肩身の狭い思いをしている愛煙家や業界団体からは、冒頭のような批判の声が噴出している。

 しかし一方で、禁煙推進団体からはさらなる増税を求める声も出ている。今回の増税議論で特徴的なのは、賛成派と反対派の論争がこれまでになく激化していることである。