トヨタのスポーツカー新ブランド「GR」に立ちはだかる強大な“敵”事前に予告されていなかった豊田章男社長(中央)も“サプライズ出演”するという力の入れようだった Photo by Koichiro Imoto

トヨタ自動車は都内で新たなスポーツブランド「GR」のお披露目会見を行った。会見では、豊田章男社長が“サプライズ出演”するほどの力の入れようであるが、なぜ、このタイミングでGRC新ブランドを展開するのか。その背景と今後の課題などを探った。(ジャーナリスト 井元康一郎)

豊田章男社長も“サプライズ出演”
GRで楽しいクルマをつくる

 今年4月に発足したトヨタ自動車社内のバーチャルカンパニー「GAZOO Racing Company(ガズーレーシングカンパニー。以下GRC)」は、新たなスポーツブランド「GR」のお披露目会見を東京・お台場にあるトヨタのショウケース施設、メガウェブで行った。

 プレジデント(トヨタはバーチャルカンパニーの責任者をこう呼ぶ)を務める友山茂樹専務役員をはじめ、開発統括責任者、デザイナー、レーシングドライバーなどが顔を見せ、さらには事前に予告されていなかった豊田章男社長も“サプライズ出演”するという力の入れようだった。

 会場には同日発売された9モデルと近い将来販売予定の2モデルの計11のGRブランドモデルがずらりと並べられるなど、派手やかなイベントであった。

 豊田氏は社長に就任してから一貫して「もっといいクルマをつくろうよ」をスローガンに掲げてきた。その豊田社長は会場で記者団に対し、「トヨタは大衆車づくりを源流としてきたメーカー。クルマを普及させるのが使命だったが、創業80年の間に蓄積してきた秘伝のタレで面白いクルマを作ることができるということを、皆さんにお見せしたい。大半のお客様は便利で快適なクルマを求められるが、GRで楽しいクルマを求められる層にもチャレンジしていきたい」と抱負を述べた。

 GRCのコンセプトは、モータースポーツから市販車、パーツ作りまでを垂直統合で行うことで、モータースポーツで得られた知見を市販車に反映させるというもの。目標は「GRCとして、部門単独で利益を出せるようになること」であるという。