痴漢の典型的加害者の「意外な人物像」とは※写真はイメージです

今年に入り、痴漢の犯行を疑われた男性が駅ホームから逃走するという事件が立て続けに起こり話題なった。メディアでは痴漢冤罪防止についての議論のみが活発になったきらいがあるが、日々起こり続けている痴漢という性犯罪事件をいかに防止するかという議論がおざなりになっている観は否めない。そこで8月に日本初の痴漢の実態を明らかにした専門書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)を上梓した斉藤章佳氏に、男性が性犯罪である痴漢に手を染めるきっかけや防止策についてお話を伺った。(取材・文/ライター 岡本実希)

 法務省が発行した「犯罪白書」(平成27年度)によれば、平成26年に発生した痴漢の検挙件数は3439件。しかし、この数字をそのまま鵜呑みにするのは早計である。

 平成22年に警察庁が行った調査では、電車を利用している16歳以上の女性のうち、89.1%が痴漢被害に遭っても警察に通報・相談していないと答えたという。つまり事件として顕在化しているのはわずか1割程度にしか過ぎないと考えられるのだ。

 参考:平成27年度犯罪白書
 参考:電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書

 痴漢を疑われた人が線路を走って逃げた事件が連続して報じられた際、これを「冤罪」である前提で取り上げるメディアもあった。しかしその後、線路を逃げた一人が逮捕されたことを知っている人はどれほどいるだろう。この逮捕された男は痴漢の前科があり、線路を逃げた際にも実際に痴漢をしていたことを裁判で認めた(参考記事:相次ぐ線路飛び降り逃走 逮捕者のひとり『痴漢冤罪ではなかった』男が公判で述べた『飛び降りた理由』)。