損保業界が抱える「高齢者が経営する代理店」の悩ましき問題金融庁は損保各社が抱える中小の老齢代理店への対応に目を光らせ始めた Photo by Takahisa Suzuki

国会質問をきっかけに、損害保険各社が代理店の手数料体系の見直しを余儀なくされている。背景にあるのは、業務水準の低い「老齢代理店」への対応という悩ましい構造問題だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

「この(手数料)ポイント制度そのものが、地域で頑張る中小代理店を、苦境に陥れているということになってきたのではないか」

 森友・加計学園問題で国会が騒がしくなっていた今年3月。参議院の財政金融委員会で珍しく、損害保険業界がやり玉に挙がった。

 問題視されたのは、損保代理店に支払う手数料体系。規模の大きい代理店をことさらに優遇し、地域に密着して活動する中小規模の代理店を冷遇するかのような体系になっている、という不満の声を議員が拾い上げ、国会で質問したのだ。

 質問したのは、野党・共産党の大門実紀史参議院議員。共産党に駆け込んだのは、損保ジャパン日本興亜の代理店関係者だった。

 霞が関における野党の影響力を考えれば、「顧客本位の業務運営の観点から、適切な指導・監督に今後努めたい」などと答弁し、かわして終わりかと思われた。

 だが、金融庁幹部は答弁の中で「実態把握」に言及し、損保各社は手数料体系の見直しに向けて対応を迫られることになった。

 なぜ金融庁は、個社案件でありかつ手数料ポイントという“民・民の契約”にあえて踏み込んだのか。大きく三つの要因がある。