「ミスなし、締切厳守」だけの経理では今後通用しない理由

定型的な事務作業をこなす人材…と捉えられがちな経理スタッフ。彼ら彼女へ向けられる仕事の効率化と言えば、“仕訳の自動化”“仕事を属人化させない”といった、表面上の作業の改善を求めるものばかりだ。しかし、本来は経理=経営管理者。経理の能力を伸ばし、経営のために力を借りるにはどうしたらよいのか。(ビジネス作家・経理環境改善コンサルタント 田村夕美子)

“ミスなく、締切厳守”だけでは
これからの経理は食べていけない

 はじめまして。経理環境改善コンサルタントの田村夕美子と申します。私は、建設・製造、美容業、レストラン事業など様々な業種の経理畑を歩み、一担当者から管理職まで様々な立場を経験してきました。その中で、経理は経営の心臓部に位置する「経営管理者」であるにもかかわらず、関連部署や経理担当者自身、そして上司までもが、単なる事務部門の位置づけとして毎日代わり映えのないスタンスで仕事を続けていることに対して疑問を持ちました。

 経理の仕事のスキルアップというと、事務作業の効率化にばかり目が向きますが、これでは経理を活かしきれていません。経理スタッフである“人”にフォーカスし、彼ら彼女らの意識と働き方の効率化を図ることで、会社の経営状態も良好になり得ると思います。

 現在も経理の現場で奔走しながら、経理環境改善のコンサルタントとして、実務者・管理者への支援活動に当たる中で感じたことをまとめたいと思います。

 では早速ですが、経理部の現状を実例でご紹介しましょう。

「ウチの経理部員は、優秀ですよ。ミスの発生率も低く、仕事の締め切り日も守られています」。そう語るのは、製造メーカーの経理部長Aさんです。彼の部下の一人である、入社2年目のBさんの主な仕事は、旅費や諸経費の精算業務。精算といっても、社員が立て替えた金額を現金で支給することはなく、キャッシュレス会計で立て替え分の精算金は毎月の給料日に振り込む方法を取っているそうです。

 Bさんの仕事内容を聞いてみました。まず、申請者から精算書が届いたら、経理規定と照らし合わせ、書類上に書かれた日当や予算科目などの金額に誤りがないか、領収書の添付や印鑑に漏れや不備がないかを確認します。そして、部長に承認を受けた後、会計ソフトに仕訳入力をして、人事部へ社員ごとの精算金額をデータで送信するという流れだそうです。