女子教育の長い伝統を持つ小野学園。「わかる授業」への改革は3年目を迎え、“完熟主義”の授業スタイルも浸透した。シラバスの進行にとらわれず、生徒の理解力に合わせて能力を引き出す教育は、今、確かな成果を生み出し始めている。

小野学園女子中学・高等学校
田中好一 副校長

 小野学園では「できない」ことを否定的に捉えるのではなく、「わかるようになりたい」という姿勢や意欲を大切にしている。

 そのため同校の教師は、授業中に「なぜ?」「どうして?」という問いを投げ掛けることが多いという。

「わからないことを“わからない”と言えることを大切にしています。例えば理科の実験では、教科書通りの手順でやっても、うまくいかないことがある。なぜうまくいかなかったかを考えさせます。別の言葉で言えば、正解までのプロセスを大切にする。それが考察であり、その地道な作業が“考える頭”をつくってゆくのです」 

 そう語るのは「わかる授業」への改革を推進する田中好一副校長である。

「わかるまで」を目指した
完熟授業を展開

 学校が嫌いになるのは、学校が嫌だからではなく、授業がわからなくなるからだ。同校でも以前はシラバスを大切に考え、計画にのっとって授業が行われていた。 

そのため、シラバスにのっとった授業に付いてこれない生徒にとって、学校は「わからないまま授業が通り過ぎてゆく場所」だった。田中副校長はそこにメスを入れたのだ。

理科では知的好奇心を刺激するため、実験や実習などの体験型の授業を多く実施している

 疑問や学びたい気持ちを呼び起こさせるように、実験や実技・実物提を行って、わかりやすさを優先。教師の多くは、教科書だけでなく自ら工夫して作成したテキストを使用し、「わかるまで」「納得するまで」を目指した“完熟授業”を展開するようになった。

 教師たちが粘り強くわかりやすい授業を展開すると、生徒たちが熱心に質問に来るようになった。逆説的だが、「わからないところ」が明確になったのだ。そうなると教師と生徒の間に信頼関係ができて、生徒は学校が好きになる。

 「小野学園は、進学実績のみを誇る学校ではありません。また運動にたけた生徒を集めるスポーツ強豪校でもありません。しかし、どんな生徒にも得意なことが一つはあると考え、それを見つけ出し、伸ばそうと力を尽くすのです」と田中副校長。

 授業の中では、特に英語教育に特徴がある。中1からネイティブ教師(音声訓練)をメインにした授業を実施。聞き取れる「耳」と正確な発音ができる「口」を重視した教育を3年間続けると、聞いて話せる英語の基礎力が確実に育つという。

 こうした「わかる授業」を地道に続けてきた結果、生徒たちは自然と仲間をつくって勉強するようになり、推薦枠ではなく自力で大学受験を目指す空気が生まれてきたという。

 今春は、慶應義塾大や青山学院大、立教大や首都大学東京などへの合格者を出した。生徒の進路の幅を広げるため、今後は職業教育の視点も取り入れながら、「わかる授業」をさらに進化させてゆくという。生徒を見捨てず、個性や思いを受け止める学校である。