最近私は、私のNPOや様々な場で市民社会の議論を行っている。非営利の世界に、質の向上を目指す新しい変化を作り出すために、今年の初めには、3年がかりでまとめた非営利組織の評価基準を提案し、エクセレントなNPOを目指すための市民会議も立ち上げた。

 こうした議論を行っているのは、政府や政治の統治に信頼が薄れる中で、この状況を変えるのは強い市民社会しかないのでは、という強い思いがあるからである。

世界が転換期にある今
市民社会の役割を重視したドラッカー

 あのP・F・ドラッカーは、すでに、1995年の著書『未来への決断』(ダイヤモンド社)で、世界が転換期にあること、さらに、その転換期は、「2010年から2020年まで続く」と断じ、その拠を知識社会に見いだし、その際に市民社会の役割を重要視している。

 世界では中東を始めとして民衆の蜂起が起こり、これまでの独裁的な体制が倒され、アメリカでも貧困を問題にした住民のデモが金融街で多発した。この日本でもこれまで当たり前と考えてきた原発問題などの集会に5万人を超える市民が集まる、という動きが起こっている。

 正直なところ、私はこうした動きが、ドラッカーが言っている転換期を示しているという確信があるわけではない。また、世界で広がっている動きと日本の状況を同じものだと考えているわけでもない。しかし、これまで遠くに見えていた政治の様々な問題を、自分たちの問題として考える動きは、この国を変える原動力になるのではないか、という期待がある。

 そこで今回は、私が最近行った2人のゲストとの議論を通じて、市民社会で何が起こっているのか、について皆さんと考えてみたいと思っている。

 1人は、私のNPOの理事でもあり、大学評価・学位授与機構准教授でNPOの研究で有名な田中弥生さんであり、もう1人は、かつてはフランス大使も務めた小倉和夫前国際交流基金理事長である。