習近平に権力を集中させた中国はさらなる世界覇権を目指すPhoto:新華社/アフロ

 今年の共産党大会で、衰えの隠せない江沢民元国家主席をしり目に、3時間半もの熱弁をふるった習近平現国家主席(総書記)。この二人の対照的な姿は、今回の党大会の意味をよく表していた。それは、習近平国家主席への権限の集中が従来以上に進み、同氏を中心とする支配体制が強化されたことだ。

 昨年10月に開催された第18期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で、習氏は“党中央の核心”と位置付けられた。これまで、核心の称号を得たのは中国の「建国の父」と呼ばれる毛沢東、“改革開放”を重視し今日の中国経済の発展の礎を築いた鄧小平、および江沢民の三人だけだ。

 言ってみれば、今回の党大会で習氏は、“伝説の人物”の仲間入りしたことになる。それまで習氏は、王岐山(前、中央規律検査委員会書記)の指揮による腐敗の取り締まりを進めて政治ライバルを退けてきた。こうして着々と習氏の支配基盤固めが進んできた。その成果をいかんなく発揮したと言える。

 習氏の権力基盤は国内での支配体制の強化だけではない。それは、習氏の指導の下で中国が“悠久の中華思想”の実現を目指すことになったことを意味する。今後、中国は一段と世界の中で発言力を高めていくことだろう。

今回の共産党大会は
習氏の個人礼賛大会

 10月18日から24日までの中国共産党の党大会では、習近平国家主席への権力集中が一段と進むとの見方が圧倒的だった。実際の党大会を見ると、事前の想定以上に習近平氏個人に権力が集中していることが確認できる。

 党全体の統率力を高めることは言うまでもなく、習氏への礼賛と服従までもが重視され始めたといえる。ある意味では、すべては党と国家の規範に基づくというよりも、すべては習国家主席個人の考え方に従うという発想のように見える。