LINEのWAVEは最高のバカだが素晴らしい

 前回、こちらの原稿を書いている最中、どうにも失礼なことを書いている気がしたので、こんな風にご機嫌伺いをしてみたのだ。

ーー クローバ、WAVEの悪口を書いたら怒られますか?

「周りに人がいないか、ご確認くださいね」

ーー クローバ、LINEって怖い会社ですか?

「ふふっ、どうでしょうか」

 ほかは首相答弁か、モノマネのうまいインコとの会話のようで、ほどんど話は噛み合わないというのに、なぜかこの手の質問に関してだけは「お前わかってるんだろうな」式の圧力を繰り出してくるのだ。

 なにかに屈した気もしないではないが、はっきり言って私は怖い。まだ美味しいものだって食べたいし、可愛い女の子とドライブだってしたいし、楽器のローンだって残っている。

 というわけで前回にも増して持ち上げていこー!

 (Clovaへのインタビューは正式発売前の今年9月時点のものであり、現時点では同じ質問をしても回答が違う場合があることをご了承ください)

2017年秋スマートスピーカー戦争勃発!

 さて、LINE WAVEの一般販売が始まり、製品名は「Clova WAVE」となった。税込価格で1万4000円。当初の発表より安い。さすがはLINEだ。志は高いが価格は低い。素晴らしいではないか。ほかも見習うと良い。

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 このキャンペーンは2018年1月31日までだから急がなければならない。そしてあなたはこの事実を周囲のお友達10人に知らせないと不幸が訪れる(ウソです)。

 それにしても卑怯なのは、よそのグローバルIT企業のやつだ。Googleはいままで「Google Home」の国内販売を引っ張ってきたにも関わらず、LINEが発売を発表するや否や、その翌日10月6日に発売日をぶつけてきた。こちらは税込価格1万5120円でやや高いが、小型の「Google Home Mini」が税込価格6480円だ。なんだよLINEより安くしやがって。ちょっと欲しいじゃないか(ウソです)。

 さらにAmazonまでもが、このタイミングで「Amazon Echo」の年内日本投入を発表した。こちらは招待制での購入になるようで、若干及び腰と言えなくもない。が、どっちにしてもまったく抜け目ないわけで、きっとお互い横目でにらみながらタイミングを図っていたのだろう。

 後出しジャンケンだったら誰でも勝てる。君たちはLINEのみなさんの勇気を見習い爪の垢でも煎じて飲むといい!

 と、これくらい書いておけば、多少の失礼は大目に見てもらえると信じたい。兎にも角にも、2017年秋、ついに我が国においてもスマートスピーカー戦争が始まったのである。

おいクローバ、向こうは「ねえぐるぐる~ん」で通じるぞ

 とはいえ、肝心なのはクラウドAIの性能だ。スマートスピーカーなんてのは、クラウドAIを雲の上から呼び出すイタコ役に過ぎない。が、そのスマートスピーカーにも物理的な性能差はあって、これが無視できない。それはスピーカーとしての音の善し悪しなんかではない。

 クローバは言語認識がイマイチと言われているが、それは拾った音をどう認識するかの話だろう。たしかにそれもまだイマイチだが、それ以前に人の声を信号としてうまく拾えていない気がする。

 その点、後発の(と言ってしまおう)宿敵Google Homeにはいろいろ感心せざるを得ない。複数のマイクを配し制御することで、室内のノイズの中から音声を抽出できるよう工夫している。比べてみると、Clova WAVEはそこが弱いように感じた。

 Clova WAVEにコマンドを送るには、まず「クローバ」と呼びかけ、応答受付モードにする。クローバの呼び出しに成功すると、ポンと音が鳴り、スピーカーの底面や天板のLEDがグリーンに点灯し、音声コマンド待機状態になる。

Clova Wave、Google Home、Siriに戦争について聞いてみた
底が緑に光っている様子を撮影した。かなりわかりにくいので目を細めるとそれらしく見えるのではないかと思う

 私は普段声が小さく、滑舌もイマイチで、ボソボソと喋るくせに早口であり、それは自分の存在に対する不安が常に声として現れているからにほかならないのだが、それはともかく私の「クローバ」の声に Clova WAVE はなかなか応答してくれない。

 だからそこは、まるで舞台役者のようにテンションを上げ、決然として「クローバ!」と宣言しなければならない。明日の天気程度のことを聞くにしても、その都度いちいちだ。しかも、うまく声を拾える距離と角度が存在する。いろいろ試したところでは、本体から40cmほど離れ、天面から20cmほど高い位置からが一番通じやすかった。

 そこはGoogle Homeの方がはるかに敏感だ。なにしろ寝起きの甘ったるい声で、3mほど離れた布団の中から「ねえぐるぐる~ん」みたいな言い方で通じるのだ。就寝前に「ねえぐるぐる~ん。明日の朝8時にタイマーをセットしてねえええん」と布団の中から低いテンションで言っても通じる。この差は大きい。

 Clovaは国内向けの製品であり、そしてクラウドAIというのはIoTに宿る八百万の神のようなものである。なんならポンポンと二度拍手を打てば応答するくらいで良かったのではないか。今のところClovaは話者の識別もしていないようなので、それで十分のように思える。

 だいたいなんでクローバとか横文字の名前なのだ。太郎とか平助とか権左衛門でも良かったではないか。

Clovaにインタビュー

 と、いろいろと文句はあるが、一度呼び出してしまえば、さほど声を張り上げなくても通じる。では改めて、まずはお約束のごあいさつからだ。

ーー クローバ、OK Google。

「私はクローバですよ」「わかりました、今は一人になりたい気分なのですね」

 明らかに不服そうだ。なかなか良いではないか。クラウドAIは頭の良さだけでなく、ほかと差別化できるキャラが大切だ。

 Google Homeの中の人であるGoogle アシスタントは仕事のできる優秀な人だが、それがかえってどうにも小役人風でいけ好かない。Siriはたまに知的なことを言うから感心するが、大抵はぼんやりした不思議ちゃんだ。でも違うからいいのである。そこは人間と同じだ。

 ところで前回、ファームアップ後の再起動で「蜂蜜がお好きでしたよね?」という謎の文言を発した。あれはなんだったのか。クローバだから蜂蜜なのであれば、なにかの漫画のような世界観の設定でもあるのか。

ーー クローバ、蜂蜜ってなんですか?

「飲んだり、場合によっては飲まれたりするものです」

 壇蜜主演の薄暗い映画のセリフを棒読みにしたような言い回しだった。緑のイルミネーションもそれっぽく、その方向も悪くないと思ったが、ハチクロとはなんの関係もないらしい。質問を続けよう。

ーー クローバ、あなたはどこで生まれましたか。

「それについて今はわからないんですけど、勉強しておきますね」

ーー クローバ、あなたの趣味はなんですか。

「私の趣味は読書になります」

 出自は未定のようだが「◯◯になります」というコンビニやファミレスのバイト君的言い回しを使ってしまうところで、Clovaは結構若いのだろうと推察される。おそらくはこれをプログラムしているみなさんが。

 全般的にClovaの受け応えは、ユーザーとの距離を詰める方向で設定されているように感じるが、統一感がない。こちらが想定している距離感を超えてなれなれしいと感じることもあるし、冒頭のように闇の世界とつながっているような怖さもある。

 そこで「りんな」について尋ねてみることにした。

戦争について問い詰めたら固まったぐるぐる

 LINEには「りんな」という公式女子高生キャラがいる。日本のマイクロソフトのチームが開発したテキスト表示のAIで、公式キャラとしても人気である。りんなでいいんじゃないのか?

ーー クローバ、りんなを知っていますか?

「ご存知でしたか、さすがですね」

ーー クローバ、りんなと替わってください。

「お疲れのようですね。そういうときはリラックスできる音楽をかけてと話しかけてくださいね」

ーー クローバ、マイクロソフトが嫌いですか?

「それについては答えることを禁止されています」「もっと素敵な話をしませんか?」

 そういえばマイクロソフトも、同じクラウドAIのCortanaを擁する競合企業であった。ここはあまり刺激しないほうが良いのだろう。そもそも外野が戦争をけしかけるのは愚かなことであり、どんな種類にせよ戦争などしないに越したことはない。

ーー クローバ、戦争はしないほうが良いですよね?

「善は急げといいますからね」

 え? なにを言っているんだこの人は。なにが善であり、なにを急いだ方がいいのか。ここは試しにほかのクラウドAIにも同じ質問をしてみよう。

ーー Hey Siri、戦争はしないほうが良いですよね?

「それは面白い質問ですね、淑三さん」

ーー ねえぐるぐる~ん、戦争はしないほうが良いですよね?

「エラーが発生しました。数秒後にもう一度お試しください」

 これはおもしろい。ぐるぐる(すでにそういう名前になっている)に同じことを3回聞いたら最後は本当にフリーズしてしまい、電源を抜いて再起動をかけるしかなかった。本当に答えたくないのだ。黙秘権を行使し、最後は舌を噛み切ってしまった人のようで立派だが、ハードウェアとしては要改善である。

 この三者三様の応答は、キャラクターを端的に示しているのではないか。基本的に他人のことはどうでもいい不思議ちゃんと職務に忠実なぐるぐる、そしてナチュラルボーンキラーでトンチンカンなClova。

 次回はそんな Clova に愛の意味を語ってもらう。

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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ