11月3日から4日まで、中野サンプラザで開催中の「秋のヘッドフォン祭 2017」。その会場で、MrSpeakersの新製品の静電型ヘッドフォン「ETHER ES」が公開された。発売は2018年Q1に向けて調整中。価格は未定。

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ETHER ESを手にするダン・クラーク氏

 昨年の春に試作機が公開されているが、外観が一新され、音の完成度も高まった。静電型ヘッドフォンは基本的に高価なものが多いが、MrSpeakersのダン・クラーク氏は「控えめな(モデスト)価格にしたい」とする。

 実際聞いてみると、ハッとするほどの透明感だ。刺さらずナチュラルな高域と豊かな低音、そして全域にわたって味付けない音色、広大な音場……といった感じで、今回のヘッドフォン祭で展示された機種の中でも、筆頭のサウンド体験が得られる機種と言っていいと思う。

音楽に没頭できることを第1目標に調整を続けた

 88mmと大口径な自社開発の静電型ドライバユニットを採用。円形で、金属製のステーターを採用している。通常の製品はプリントコイル基板をステーターにするそうだが、ここを金属にすることで、リジット(固く)でステイプル(安定した)なものになるという。また、静電型ではフィルム状の振動板にホコリなどが付着しやすいが、それを防ぐために、高性能な粉塵除去フィルタも搭載した。

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 初期の試作機ではハウジングの外側を押さえたりすると、ざざっとしたノイズが出やすかった。それは大口径の振動板を利用するためで、この改善に時間を要したという。

 ケーブルは着脱可能。ヘッドフォン側の端子は独自のものを新たに開発して採用。ケーブル自体は、取り回しにくいフラットケーブルではなく、しなやかさで取り回しのしやすいものにしているという。アンプ側はアルミ合金製の端子カバーに金メッキのピンを使っている。

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 ダン・クラーク氏は「クラリティ(音の明晰さ)とディティール(緻密さ)。そこが音楽によりつながれる要素。実際に“見ているか”のようなリアルなサウンドを目指している」と語った。同時に「エレクトロスタティク型(静電型)は優れているが、既存のものでは音楽に繋がり切れない部分を歯がゆく感じていた」ともした。音楽につながるエレクトロスタティクス型をつくることが第1目標だったのだ。

 高域をマイルドにしたのは、全体のバランスをとるため。フラットで全体を通じて強調感がないことに加えて、低域は10Hzと低い帯域まで沈み込み、かつ極めて分解能が高くソリッドにしているという。

 静電型ヘッドフォンというと、“どれだけ低域が出るか”や“音場の広さ”ばかりに注目されがちだが、そこだけにフォーカスし過ぎると、音楽のジャンルによっては、違和感が出ることが分かった。ここに配慮しながら、音のディテール・透明感・精密さなどを詰めていったそうだ。

 アンプに関しては他のアンプメーカーと連携・協力していく計画。たとえばLTA(Linear Tube Audio)とZOTL型のアンプを共同開発している。またiFIオーディオの「Pro iESL」のように、スピーカー駆動用アンプの出力を静電型ヘッドフォンを駆動するための高電圧なものに変換する“エナジャイザー”などに言及していた。

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 同時に既存の静電型ヘッドフォンのシステムとつながる(具体的にはSTAXなどを持っている人に新しい選択肢を提供する)ようにし、ヘッドフォン交換によって違う音楽体験をしてほしいとする。価格も抑え、すでに他社製品を使っているユーザーだけでなく、初めて静電型ヘッドフォンを使う人も楽しんでもらいたいとした。

リーズナブル平面磁界型「AEON」の開放タイプも

 一方、既発売の「AEON FLOW」を開放型(オープンバック)にした「AEON FLOW Open-Back」もまもなく発売する。価格はAEON FLOWと同等になる見込み。

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AEON FLOW Open-Back

 なおこれはETHERシリーズにも共通することだが、装着時の快適性に関しては重視しているという。快適性と音楽性の両立が、リスニングに対して大事。音楽を聴く体験はヘッドフォンを付けるという物理的な行為とつながっているので、これが快適でないと人間の脳が心地よいと感じないという。

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 なお、AEON FLOW Open-Backには白と黒、2種類のチューニングパッドが付属し組み合わせで音を明るくしたり暗くしたりといった調整ができる。ユーザーの聞く音楽や機器を何パターンか想定、それぞれのケースに応じてこのパッドを使えば理想に近づくのではないかと想定して用意したものだ。例えば、トランジスターアンプなら低域、真空管アンプなら高域が欲しいと思うかもしれないといったものだ。ただし、MrSpeakesとしては、このヘッドフォンで、こういう音楽をこう聞けと言うことはしたくないそうで、2枚重ねたり、場合によっては取り外すなど、自由に使ってほしいという。