どの職場でも仕事のすすめかたには、独自の流儀や作法があるもの。会議のすすめ方や仕事の任せ方などは、社歴が長くなれば、それだけ社風にあった段取り力が培われていくことでしょう。

 なかには、「営業会議で若手社員は上司から意見を求められるまで発言してはいけない」という封建的な暗黙のルールがある職場や、逆に自由闊達な意見交換に参加しないと存在感を否定される職場もあります。そんな流儀のまったく違う会社の社員同士が一緒に仕事をすることになったらどうなるでしょうか。

 今回はIT系ベンチャー企業と歴史ある大企業が、同じプロジェクトで仕事したときに起きた仕事のすすめ方のギャップをテーマに対処法を考えてみたいと思います。

大企業を頂点にしたヒエラルキーが崩壊!?
成功するベンチャー就職組への嫉妬心も

「ゲームサイトの企業に球団経営ができるはずがない!」

 世間を賑わせている球団買収問題に対してこう文句をつけているのは、メガバンクに勤務するDさん(37歳)。一流大学を卒業し、当時の人気企業であった銀行に入行しました。ちなみに同じ大学で成績優秀だった友人たちは、大手マスコミや総合商社、銀行に就職しています。

 当時はすでにバブルも崩壊していましたが、それでも(歴史のある)大企業に入社するため、一流大学を目指し、厳しい受験戦争を戦ってきたのは事実。よって、学歴と同じように入社した企業ブランドで友人同士のヒエラルキーも構築されていました。

 年に1回のペースで開かれる同窓会でも、

「成績が悪くて大企業に就職できなかったS君は同窓会に来ない。メガバンクや人気の総合商社に就職した連中が卒業後に集まりを仕切っている」

 という具合で、入社した会社で得たブランド力で力関係が構築されていました。

 こうした状態なのは、まだ「大企業に入社すれば一生安泰だ」と皆が思っていた時代だったからかもしれません。ですから、当時は吹けば飛ぶような存在だったIT系ベンチャー企業に就職する人など、誰もいませんでした。「ベンチャー企業なんて隙間産業に過ぎない」と、見下すような発言をする人がいたほどです。

 ところが、日本経済はその後、不況まっしぐら。Dさんが入行した銀行も、ライバル行と合併。大規模なリストラ策が発表されて給料は抑制され、「45歳で支店長になり、年収1000万円は間違いない」と確信していたキャリアさえ、不透明な状態になってきました。