前社長の解任劇から「飛ばし」発覚へ
見つかってよかった日本企業の暗部

 オリンパスの前社長・マイケル・ウッドフォード氏が解任され、それをきっかけに同社をめぐる情勢が急変した。ウッドフォード氏は、オリンパスの企業買収に関する手数料などの支払いに関して、「同社が何らかの不正に関与した」との疑問を表明した。

 それに対してオリンパス側は、「自社が不正に関与した事実はなく、ウッドフォード前社長が機密を漏洩した」と、真っ向から対立姿勢を示した。この騒動をきっかけに、オリンパス経営陣による深刻な「損失飛ばし」事件が明るみに出たことは、報道の通りである。

 金融専門家の間では、「今回の勝負は、最初から明らかだった」との見方が多い。というのは、オリンパスのM&Aに関する手数料は明らかに過大であり、その裏に何か“からくり”があることはすぐに察しがつくからだ。

 しかも市場関係者の中には、今回の内紛のニュースを聞いて、「1990年代のバブル崩壊以降、多額の損失を抱えたファンドなどを引きずっているのではないか」と思った人は少なくなかった。

 わが国の資産バブルが崩壊したのは90年代初頭、もうすでに20年もの歳月が流れている。報道されている情報によると、オリンパスの財テク失敗に伴う損失は90年台から発生しているという。

 それが事実とすれば、「多額の損失を“飛ばし”によって、よくも20年間も隠し通してきたものだ」との驚きを隠せない。それだけ、わが国の企業統治=コーポレートガバナンスがお粗末ということだ。

 オリンパスのような立派な上場企業で、ガバナンス機能が働かなかったことには、「開いた口が塞がらない」と言わざるを得ない。

 一方、ウッドフォード前社長によって、それが白日の下に晒されたことは喜ぶべきだ。それがなければ今でも隠蔽が続き、同社の暗黒はさらに続いたはずだ。それが阻止されたことの意味は大きい。