円高の加速や通商政策の立ち遅れで国際競争力を削がれる日本の製造業。川上に立つ総合化学最大手に日本拠点のあり方を聞いた。

三菱ケミカルホールディングス社長 小林喜光<br />国内生産維持に固執せず海外で稼いで日本に投資Photo by Kiyoshi Takimoto

──電機メーカーや自動車メーカーと同様に、石油化学産業も国内生産は曲がり角か。

 日本の製造業は国際競争力が削がれる「6重苦」(①円高、②通商政策の立ち遅れ、③高い法人税率、④電力問題、⑤労働規制、⑥温暖化ガス削減の重いコミットメント)に見舞われているが、化学産業が背負うのは「原料コスト高」も加わった「7重苦」だ。

 コストが安い中東勢などの低価格製品が増え、国内生産は今後さらに輸出競争力を失っていく。

 加えて高齢化で内需も減っていく。さまざまな石油化学製品の基礎原料であるエチレンを製造する設備は国内に15基。内需に対して設備の3分の1が余剰だといわれている。

──どんな手を打つのか。

 当社は国内にエチレン設備を3基持っており、1基は水島(岡山県)、2基は鹿島(茨城県)にある。水島、鹿島の双方で、そうとうな“手術”を行う。