ソフトバンク VS 中日
極上の緊張感があった日本シリーズ

 つい先日まで戦われていた福岡ソフトバンク・ホークス対中日ドラゴンズの日本シリーズは、久しぶりに快適な緊張感を覚えながら観戦した野球の試合だった。

 近年、テレビで放映される野球の試合自体が減ったが、サッカーのような一瞬も目を離せないスポーツと比較して、いかにも弛緩して見えることが多かった。しかし、今シリーズは、一球一球の「間」に緊張感が漂い、久しぶりに真剣勝負を堪能した気分になった。

 この緊張感の源は、明らかに中日ドラゴンズの監督だった落合博満氏だったと思う。今期の数字を比較した段階では、中日がソフトバンクに勝てるとはとても思えなかった。

 しかし、落合監督なら、これを何とかするのではないかという不気味さがシリーズ全体を支配した。特に、ソフトバンクの一線級のピッチャーと戦って、何とも打てない(本当に、打てなかった)中日打線で勝利をもぎ取った第一戦、第二戦の両チームを金縛り状態にするような緊張感は、腕組みをしながらじっと戦況を見つめる落合監督が作ったものだろう。

 こういう試合が見られるなら、球場にも行きたいし、テレビでも野球を見る気になる。巷間言われるところでは、落合氏は、集客効果の悪い監督だと球団に嫌われて、乱暴にもシーズンの途中に今季限りでの解任が発表されたとされている。

 しかし、筆者には、せっかく落合氏が極上のコンテンツを作っているのに、中日球団の営業努力が不十分で集客が減ったように思えるのだが、どうなのか。これは、たぶん来期の中日の様子を見ると、何が問題だったのかがわかるのだろう。

 さて、つい先日まで中日ドラゴンズの監督だった落合博満氏は『采配』(ダイヤモンド社)という本を著した。これは、現代のビジネスパーソンが読む価値のある本だと思うので、紹介してみたい。