今後の日本の労働需給に大きな影響を与える要因として、つぎの3つをあげることができる。

 1.製造業の雇用

 2.介護医療部門での雇用

 3.全体としての労働力人口

 製造業の雇用はこれまでも減少を続けてきたが、介護部門で雇用が増加することで吸収されてきた。こうなったのは、2000年の介護保険制度導入の影響が大きい。他方で、全体としての労働力人口には、あまり大きな変化はなかった。

 今後はどうであろうか?製造業の雇用が減少し、介護医療部門で増加するという傾向は、これまでと同様に継続するだろう。最も大きな変化は、人口高齢化のために労働力人口の減少が始まることである。問題はこれらのバランスだ。

 製造業の雇用減少は、生産拠点の海外移転などによって、従来より加速する可能性がある。他方で、介護保険創設の初期効果が薄れるため、介護部門の雇用吸収力は、従来より落ちる。

 この2つを比較する限り、製造業の雇用減少は介護医療での雇用増より大きく、したがって、労働力が余る(失業率が上昇する)ように見える。

 しかし、人口構造の高齢化による雇用者総数の減少は、きわめて大規模なものとなる可能性がある。そうなれば、差引で全体として労働力不足に陥る可能性もあるのだ。

 したがって、将来の労働需給については、定性的議論では不十分であり、定量的検討が不可欠だ。