カリスマ経営者・柳内正氏が率いる
ファーストリテイリングを徹底解剖

 筆者の場合、一代で事業の礎を築き上げた経営者との付き合いが多い。強烈な個性に閉口してしまうことが多いのだが(と、さらりと書いておく)、希代の名経営者ばかりであることもまた確かだ(と弁明しておく)。

 経営者のタイプは各人各様でも、みな同じ悩みを抱えている。自分の亡き後、会社はちゃんと回るのか、ということだ。残念ながら、名経営者であればあるほど、願いはかなえられない。引退した後も、存命の間は、彼への依存が消えないからである。

 そこで、ある経営者は考えた。「自分がこの世からいなくなる」そんな疑似環境を作り出せないものかと。筆者は答えた。「階段を下りるときに、貧血を起こしたフリをして、『階段落ち』でもしたらどうですか」と。いまだ試した人はいない。試されても困る話だが。

 さて、今回取り上げるのは、ユニクロ事業を展開するファーストリテイリング(以下・ファストリ)である。第34回コラム(キリンビール&アサヒビール編)において、原価計算に絡めた話でファストリを取り上げた。本格的に取り上げるのは、第7回コラム以来、2年半ぶりである。

 ファストリは、第37回コラムのソフトバンクや第54回コラムの日本電産などと同様、カリスマ性を持った名経営者の存在で知られる。有価証券報告書の「事業等のリスク」を参照すると次の記述がある。

今年の冬はブームを作れるか?<br />ユニクロの死角を再び問う

 名経営者が、企業の業績にどれだけの影響を及ぼすのかは、実際にそういう事態を迎えないことには推し量りようがない。「現状はどうなのか」や「向こう3ヵ月先はどうなのか」といったことを淡々と解析してみよう。