今回紹介する郷土料理は東京都だ。といっても江戸料理を紹介するわけではない。東京から南に287km行った先にある、東京都八丈町。そう、八丈島である。

 そんな八丈島料理を、若者の街「原宿」のど真ん中で供する店が、今回訪れた『はっとり』である。この場所で十数年お店をやっているが、原宿にもう一店舗、溜池山王にも最近3軒目の店を展開し、八丈島の味を都心で働く人々に伝えている。

明日葉のおひたし、天ぷらに、
酒は島焼酎の明日葉茶割り!

むろ鯵のくさや――くさい!いや、いい意味で…でも、やっぱりくさい「最高の肴」明日葉のおひたしと明日葉の天ぷら。別名を八丈草とも呼ばれる明日葉は、八丈島を代表する味のひとつ。

 明日葉(あしたば)は伊豆半島、伊豆諸島、房総半島を中心に自生するセリ科の植物で、別名を八丈草とも呼ばれ、八丈島とは切っても切れない食材である。味には苦味のような独特のくせがあり、これがいろいろな形で食べられる。

 そんな明日葉の加工品のひとつが明日葉茶である。この明日葉茶で、島の焼酎を割って飲むのが八丈島流だ。

 八丈島焼酎は芋焼酎と麦焼酎、そして、麦と芋のブレンドの焼酎がオーソドックス。鹿児島や宮崎の芋焼酎では米麹仕込みが多いのだが、島の焼酎は、麦麹で仕込む。なので、芋焼酎にも麦の香ばしさや重厚感が加わり、パンチのある味わいが楽しめるのだ。しかし、それを明日葉茶割で飲むと、アラ不思議、明日葉の苦味が焼酎のアルコール感をまろやかにして、いくらでも飲めてしまう。

「スタートはビール……。いや、やっぱり八丈焼酎と、明日葉茶のお茶割りセットをもらおう! つまみも明日葉のおひたしと、明日葉の天ぷらで」

 八丈島の料理を食べるのだったら、最初はやっぱり明日葉だとばかりに、つまみを2種類たべる。この店には、ほかにも「明日葉の胡麻和え」や、「くさやと明日葉のマヨネーズ合え」など、明日葉料理がいろいろある。

 これと焼酎の明日葉茶割りを飲んでいると、もう明日葉の風味が全開である。ほどよい苦味で、酒がどんどん進んでしまう。とっくりに入った2合半の焼酎があっという間に減っていく。酒は『黄八丈』(八丈町大賀郷・磯崎酒造)だ。現地でもとてもよく飲まれている島の焼酎である。