多忙なビジネスパーソンや、小さなお子さんがいる家庭の強い味方「ネットスーパー」。この数年で利用者が急増している。

 2010年度のネットスーパー市場は569億円で、前年を35.8%上回った(富士経済調べ)。同年初頭の利用者のうち55.9%は2009年から、20.3%の人はさらにその前年(2008年)からネットスーパーを利用し始めたというから、利用者全体の約8割がこの3年以内にユーザーになったわけだ。

 入会費や月額利用料がかからず、商品の価格は実店舗とほぼ同じ。ものによっては“ネット特売”もある。注文は24時間OKで、雨の日も風の日も重い食材であっても自宅まで届けてくれるとくれば、重宝がられるのも当然か。

 そんななか、昨年末から今年1月にかけて、韓国ソウルでネットスーパーの画期的なサービスが登場した。地下鉄駅のホームドアが、バーチャルスーパーマーケットと化したのだ。(関連情報/Virtual Grocery Shopping - Technology Review

 このプロモーションを展開したのは、英国大手スーパーマーケットチェーン「Tesco」の子会社「Home Plus」。電車とホームの間の防護壁に描かれた、様々な商品の“絵”に付いているQRコードをスマートフォンで読み込むと、Home Plusオンラインサイトの買い物かごに商品が追加される。その後は、一般的なオンラインショッピングと同じく、自宅や会社などの登録された場所に商品が届けられるという仕組みだ。

 他の乗降客に迷惑をかけず、万全の安全対策が求められるのは当然だが、地下鉄の駅、しかもホームで買い物ができるのは、便利のひと言に尽きる。電車の待ち時間を買い物に充てるというのも画期的だ。利用者は2ヵ月間で1万人を超え、同社のオンラインショッピングの売り上げは130%増加したという。

 地上、地下を問わず、このところ都区内の鉄道各社はホームドアの設置に力を入れている。広告出稿に及び腰の企業が多い昨今、ホームドアを掲出スペースとして収益を期待するのは難しい。ならば、ここを“融合スーパー化”するのはどうだろう。

 日本の大手スーパーのほとんどがネットスーパーを展開している。リアルとバーチャルを融合させた形態として、今後日本でもお目見えするかもしれない。

(筒井健二/5時から作家塾(R)