自民党内からは、「無償化は認可外保育所にも認めるべき」「高等教育無償化は低所得世帯に限定しないと、金持ち優遇になる」などの異論が相次いだ。

 そもそも、安倍晋三首相が「消費税の使途変更」による「教育無償化」を突然打ち出したのは、解散・総選挙を直前にした9月25日の記者会見だった。

 その後、選挙公約策定においても党との調整は行わず、無償化の対象範囲も明示しないまま。選挙大勝後は、政策パッケージ作りにおいて、都議選惨敗で鳴りを潜めていた官邸主導が一気に復活した。

 それを象徴するのが、安倍首相が10月末、財源として企業から3000億円の拠出を経団連会長に要請したことだった。

「党内で全く議論していない。官邸で何でもかんでも決めてしまうのはいかがなものか」と、党内で無償化問題を議論してきた「人生100年時代戦略本部」の小泉進次郎事務局長が苦言を呈したように、自民党内の苛立ちはピークに達した。

剛腕首相秘書官が司令塔
消費増税の使途変更も舞台回し

 一連の政府側の動きの「司令塔」の役割を担ったのが、今井尚哉・首相政務秘書官。「首相の最側近」として、これまでも原発再稼働や消費増税先送りなど、重要政策が打ち出される局面を仕切ってきた剛腕秘書官だ。

 財務省幹部はこう語る。「2兆円という規模も今井氏のイニシアティブで決まった話。選挙でアピールするには、わかりやすい丸い数字がよかったからだ。消費税増収分(1.7兆円)で足りない財源をどうするか。アイデアを出せといわれる中で、もともと企業が、企業設置保育所整備の名目で拠出金を出していたから、私立保育所のほうも出してもらおうと。最終的には、今井氏が首相に『この案で』と言って決まった」。

 その後、今井氏の指示を受けた同じ経産省出身の新原浩朗・内閣府政策統括官が、水面下で経団連に折衝。「首相要請の舞台」を整えたという。

「本来なら、うちが経産省と一緒に経団連に根回しをする話だけど、それをやらずに済んだ。楽をしたといえばそうだが、この政権では今井氏の存在がそれだけ大きいということ」。この幹部は自嘲気味に話す。