一流のプロの話から智恵を掴める人、掴めない人

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第35回の講義では、「戦略」に焦点を当て、拙著、『知的プロフェッショナルへの戦略』(講談社)において述べたテーマを取り上げよう。

「メタレベルの智恵」が求められる時代

 前回は、職場で「師匠」を見つけ、「職業的な智恵」を学ぶことの大切さを語った。そして、人工知能革命が到来するこれからの社会においては、「専門的な知識」を身につけた人材ではなく、「職業的な智恵」を身につけた人材こそが活躍することを述べた。

 では、「職業的な智恵」を身につけるためには、何が求められるか。

 そのためには、「智恵を掴むための智恵」、すなわち「メタレベルの智恵」を身につけることが必要である。

 かつて、営業の世界で活躍するプロフェッショナルに話を聞いたことがあるが、彼は、若い頃、「営業の達人」と呼ばれる上司の下で、この上司を「師匠」と思い定め、営業のスキルやセンス、テクニックやノウハウを徹底的に学んだ。

 従って、彼に話を聞くと、いつも「今日の自分があるのは、あの上司のお陰だ。あの人を師匠として、多くを学ばせてもらった」と語るのだが、時折、彼は、こうつけ加える。 「しかし、あの上司の部下だったのは、自分だけではなかったのだが…。残念ながら、あれほど優れた上司の下にいて、大切なスキルやテクニックを学んだ部下と、学ばなかった部下に分かれる…」

 この営業プロフェッショナルの述懐は、極めて重要なことを指摘している。

 すなわち、職場に「師匠」と呼ぶべき優れた先輩プロフェッショナルがいても、その師匠から、「職業的な智恵」を掴むことのできる人と、できない人がいるということである。

 では、なぜ、そうした違いが生まれるのか。

 その一つの大きな理由は、先ほど述べた「智恵を掴むための智恵」、すなわち、「メタレベルの智恵」を身につけているか否かである。

 では、その「メタレベルの智恵」とは、いかなるものか。