今回のテーマは中国のデジタルビジネスです。中国はすでに世界有数のデジタル先進国であり、その先鋭的なサービスやビジネスモデルは、世界の各企業から注目を集めています。今回は、BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)の元メンバーで、現在は中国で育児動画配信サービス事業を展開するワンドット株式会社のCEOを務める鳥巣が、中国のデジタルビジネスの動向や、日本企業が中国でデジタルビジネスを行う意義などについてお話しします。

巨大市場・中国で始めた
育児情報の動画サービス

日本企業が「デジタル先進国」中国で挑戦する意義とは何かワンドット株式会社CEO 鳥巣知得

 筆者が在籍するワンドットは、ベビー用品などの大手メーカーであるユニ・チャームと、BCGDVが出資し設立されたスタートアップです。「Babily(ベイビリー)」という育児動画メディアを中国及び日本で提供しています。

「Babily」は、育児のノウハウ、育児用品や知育玩具の紹介、離乳食のレシピなどを、スマートフォンでも見やすい1分動画で制作し、配信するサービスです。2017年2月に中国で本格的にサービスを開始して以降、順調に支持を得て、現時点でユーザー数が230万人を突破するという規模に拡大してきました。

 およそ40兆円とも言われる巨大な中国育児市場の中で、育児観や子育てのスタイルが急激に変化していることや、海外の育児情報へのニーズの高まりなどに着目し、本サービスは開発されました。また、若い親世代の情報収集経路が、ソーシャルメディアやスマホ動画といった新しいメディアにシフトしてきたことも大きな背景となっています。

 これまでワンドットでは、ユニ・チャームが長年培ってきた育児領域での経験と、この連載でも何回か紹介されているBCGDVのメソドロジーを活用し、市場調査からアイディエーション、そして実際のサービス立ち上げまでを行ってきました。今回は、中国での事業立ち上げや日々の運営を通じて筆者が見聞きし、感じていることの一端をご紹介したいと思います。