ゴーストショッピングモールが
社会問題化するマレーシア

ABCクッキングスタジオがマレーシアで大成功できた秘訣情報としての知識を手に入れることは簡単だが、経験に基づいた知識を学べる場所が圧倒的に不足している。ABCクッキングスタジオがマレーシアで盛況なのは、まさに体験から学べる場を提供できているからだ

 先日、マレーシアのショッピングモール協会の会長に取材する機会を得た。マレーシアは車社会のため、どこに行くにも車が必要だ。環境的には、大都市圏から離れた日本の小さな地方都市を思い浮かべてもらうと近いだろう。そういう環境では大抵の場合、大型ショッピングモールがあり、付近の人々はみな車でそこに集う。

 マレーシアでは、都市部でもそういうことが頻繁に起こる。人工密度が日本よりも圧倒的に低いので、場所から場所への移動には、かなり手間がかかる。多くの種類の店が集まっているショッピングモールに行けば大抵のことは済ませられるため、そのほうが便利なのだ。

 だが最近では、ショッピングモールが乱立し、供給過剰な状態に陥っている。オープンしている店が全体の半分にも満たないまま、1年以上営業しているような「ゴーストショッピングモール」も多く出てきている。

 実際、クアラルンプール中心部には完全に潰れて廃墟化してしまったショッピングモールがあり、そこは犯罪者たちのアジトのようになってしまっている。そのため、そこの治安維持にかかる費用が膨れ上がり、社会問題になっている。

 会長は以上のような問題を概観しつつ、これからはショッピングモールの生き残りが重要となることを指摘し、その鍵となるのは「体験」だと言った。

 ショッピングモールを、ただの「買い物する場所」と考えると、差別化は難しい。いまではどのショッピングモールでも、似たようなレストランやブランドショップが並んでいるからだ。人々は、近くて便利な場所に行くだけである。

 「ショッピングモールをそんな『消費の場』として捉えていては、生き残れない」と会長は言う。