「実は私、一緒に仕事をするようになってからずっと、課長のことが好きでした。うちの会社は、昔から暗黙のうちに社内恋愛から、結婚という流れになっていますよね。もしよかったら、社内恋愛ではなく、結婚してください。結婚ができないなら今夜のことは聞かなかったことにしてください」

「辞めたいがどうしよう」という話だと思い込んでいたので、15歳も年の離れた部下からの予想外の告白に、Cさんは何にも言葉が出なかった。

 会社の歓送迎会などで話すことはあっても、なかなか2人きりで話すこともなく、自分が会社の女の子に告白されるなんて夢にも思っていなかった。

 Cさんが忙しくて昼ご飯が食べられないときは、3時頃に牛丼弁当をさりげなく買ってきてくれるような優しい子だった。しかしそれは、自分以外の人間にも分け隔てなくやっていたのだ。心のなかで、「俺みたいな歳の離れた普通のおじさんのどこがいいんだろう」ということばかり考えていた。

 Cさんはその夜に一晩寝ずに考えが、聞いたときからほとんど心は決まっていた。翌朝、「自分でよければ」と返事をした。最近は寿退社よりも、出産退社のほうが多いので、結婚で必ずしも辞める必要はない。ただ、堅物だと思われていた自分との結婚、15歳という年の差で、しばらくは周囲から好奇の目にさらされるかもしれないという心配があったので、会社は辞めたほうがいいよとアドバイスをした。

 しばらくして、身内だけで式を挙げた。父親が亡くなってから1人で頑張ってきた母や姉がハワイまで来てくれた。派手ではないが、暖かい式だった。

穏やかな日々が一転、
妻が突然倒れ…

 年の差がある夫婦はみんなそうかもしれないが、Cさんも漠然と年が上の自分のほうが早く病気になると思っていた。50を過ぎると、さらにそれを強く思うようになった。でも、妻に介護や看病させるのはとても可哀そうだと思っていたので、健康診断は毎年欠かさなかった。Cさんは妻も健康診断を受けているものと思っていた。

 ある休日、買い物から帰った妻が「頭が痛い」と言って台所で倒れてしまった。救急車が来るまでの数分が何時間にも感じた。意識はあるももの、会話ができるような状態ではなく、このまま寝かしといてよいのかさえ、わからない。