上田 去る9月1日、福田康夫総理大臣が突然の辞任を表明しました。それを受けて自由民主党の総裁選が告示され、後継者選びが始まります。

 その福田総理の最後の置き土産とも言えるのが、辞任表明の直前、8月末に発表された政府の「総合経済対策」です。景気減速トレンドが一段と強まる昨今、この経済対策はいったいどんな意味を持つのか。今回は、過去に行なわれた同様の対策も含めて、きっちり議論してみましょう。

 それにしても、あの突然の辞任会見には驚きましたね。安倍晋三前総理に引き続いて、「突然の政権投げ出し」です。これから自民党は、いったいどうするんでしょうか?

竹中 当然、厳しい評価は止むを得ないでしょう。逆に言えば、自民党が生き延びる唯一の術は「総裁選をドラマティックにやる」ことしかない。最近では、民主党のほうが影が薄くなって困っているという報道もあります。やはり、国民の関心はテレビへの露出度に大きく左右されますからね。

 その意味では、非常に厳しい決断とはいえ、結果的に色々なインパクトをもたらしたと言えるかもしれません。

実は「政府の安心」のための対策?
骨太方針の焼き直しに過ぎない内容も

上田 なるほど。福田総理の「置き土産」であるこの総合経済対策、竹中さんはどのようにご覧になっているんでしょうか?

竹中 まず対策の正式名称は「安心実現のための緊急総合対策」となっており、実際には「経済対策」という言葉がどこにも入っていません。さらに、これが20ページもあってすごく厚い。

 何故なら、その数ヵ月前に発表された今年の「骨太方針」に盛り込まれた内容を、もう1度焼き直したような内容も多いからです。たとえば、「社会保険庁の年金記録をちゃんと行なう」などという、経済対策とはあまり関係ない内容が多いのが実情です。

上田 そうなんですか?

竹中 政権与党として「選挙も見据えてこれだけはアピールしたい」という政治的な思惑を強く感じます。あれやこれやと全部詰め込んだため、水ぶくれしているんですね。言い方は悪いですが、「これでは、政治家の安心のための緊急選挙対策ではないか」と思います。