彼らは1日に2回配達している。すると何も説明していないのに、「いいよ。先使えよ」。

 顔見知りとはいえ、こういうところが中国人である。

“魔法の杖”が戻って一安心
中国でスマホをなくすのは恐ろしい

中国でスマホを紛失したら、どれだけ恐ろしい事態になるか谷崎光さんの『本当は中国で勝っている日本企業 なぜこの会社は成功できたのか? 』(集英社刊)が好評発売中。240ページ、1512円(税込み)

 新しいスマホにSIMカードを挿したとたん、微信は復旧し、友人知人に返信を送り、銀行アプリでお金を動かしたり、ついでにお昼ご飯の配達も頼んで、まるで“魔法の杖”が手に戻ったようである。

 午後には近所の店で、水没したスマホも修理してもらった。おっちゃんは私がカウンターを離れたすきに、スマホの中の写真を勝手に見て、「日本人、日本人」とうれしそうだった。

 北京の日本大使館のパーティで撮った、着物を着た日本女性たちの写真があったからである。

 今回、スマホそのものをなくしたわけではないから焦らなかったが、現在、中国でスマホを紛失し、そこから支付宝や微信支付、銀行アプリの暗証番号を解析され、または簡単にできる送金で大金を移動されたケースは少なくない。

 今は中国在住の日本人も多い。スマホをなくしたら、銀行より何より、まず電話会社に携帯番号の紛失届をすること。私が何もできなくなったように、これで基本的にパソコンや他の端末からも、お金やSNSの操作が不可能になる。それから、銀行アプリや支付宝、微信支付を停止していく。

 いくらスマホに複雑なロックをかけていても、SIMカードを外して、他のスマホに入れて、それで短信の暗証を取る操作をすれば、お金関係のハックは簡単である。

 今、中国でスマホを失くすことは、財布をなくすより、よほど恐ろしいのである。