ガス器具カバーは部屋の雰囲気に合わせたオーダーメイドで近所のおじいさんに作ってもらった

 1フロアあたりの面積は約75平米。特に2階のリビングルームの広さが印象的だ。家具は作り付けのキャビネットとソファ、そして低いテーブルが2つだけ。

「広い空間をいつもキープしていたいので使用頻度が低い家具は置きたくない。何年かに一度、大きなダイニングテーブルが欲しい夫と口論になりますが、そうすると椅子も必要になるので、なかなかイエスとは言えません(笑)」

 スペースがあるとつい何かで埋めたくなってしまう日本人にとって、広い空間を維持することは意外と難しい業なのかもしれないが、この潔さは見習いたいところだ。部屋を彩るのはアフリカやアジアの工芸品、日本人作家の作品など。

(左)約50年前に作られたケニアの敷物とビンテージのライトスタンド。(右)タペストリーはボルネオ島から

「ここにあるものは飾るために買ったというより、私と夫が旅先や取材先で出会った思い出深いものであったり、応援したい友達の陶芸家やアーティストの作品など、すべて私たちにとって意味のあるものばかりです」

 夜のリビングルームはまた別の顔。天井の蛍光灯をすべて和紙で覆い、間接照明のみの空間は、何やらちょっと幻想的な雰囲気に包まれる。

「初めてうちに来た人は暗いと感じるかもしれない。けれど、今の日本の照明は明るいというより眩しすぎで、あれではリラックスできないと思う。日本の皆さんには、ぜひ谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読んでください、と言いたいです」

(左)ケイトさんの仕事の一部。日本の調理道具を紹介する 本の英文版や書籍のプロデュース。(右)ケイトさんの仕事部屋。書棚と机は小西さんの作
Profile
Kate Klippensteen

サンフランシスコ生まれ。サンフランシスコ州立大学卒業。作家、ジャーナリストとして活躍。「えいごでよむ名作えほん」や「Japanese Kitchen Knives」(野崎洋光氏との共著)など著作多数。NHKの海外向け番組(旅、ファッション、伝統工芸)なども担当